新年のご挨拶 – 会長理事 河野 洋平
会員のみなさま、明けましておめでとうございます。年頭にあたり一言ご挨拶を申し上げます。
新型コロナウイルスとの共存が進み、社会経済活動の正常化がようやく現実のものとなりつつあります。しかし一方、ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエル・パレスチナ情勢の悪化などの地政学的リスク、これらに端を発するエネルギーや穀物・肥料等の価格高騰による世界的なインフレの進行、急速に進む地球温暖化による自然災害や国民生活への影響など、われわれを取り巻く世界的な環境は決して、手放しで安泰とばかりは言えないように思います。
ここ数年間、経済的活動や文化的活動などが制約を受ける中、競馬界および軽種馬生産界はともに好成績を維持することができました。特に昨年は、ウイズコロナが進み、国民の皆様の余暇の楽しみ方や各種レジャー産業も平常モードとなり、勝馬投票券の売り上げが心配されましたが、中央競馬、地方競馬ともにほぼ前年並みを維持できました。これは何よりも競馬や競走馬を支えてくださった人々のおかげであり、まずはそうした方々に感謝申し上げたいと思います。
現在の軽種馬生産界は、中央競馬、地方競馬の勝馬投票券の発売金拡大を背景とした軽種馬の購買意欲の向上により、せり市場の成績が右肩上がりに推移するなど好況の中にあります。また、一昨年11月の競馬法の一部改正では馬産地への支援措置が恒久化されるなど、これまでにない恵まれた環境下にあります。
せり市場を見ると、当歳・1歳・2歳馬が市場全体で、売却頭数2,739頭、売却率81.2%、総売上額が529億円を超えるなどいずれも過去最高を記録し、総売上額については13年連続で前年を上回るなどの快挙達成となりました。
これには、勝馬投票券の売り上げ増大による新規馬主層の拡大はもちろんのこと、地方競馬の主催者、馬主会による新馬入厩促進策、団体購買や購買補助制度の充実などの後押しも大きいと思います。
しかしながら、一方では軽種馬生産をサステナブルなものにするために欠くことのできない後継者や従事者、獣医師など各分野の担い手が不足しています。
また、今後はアニマルウエルフェアの精神に則った軽種馬の生産、競走馬のセカンドキャリアなど、将来にわたり取り組まなくてはならない課題も山積しています。状況の良い今だからこそ、こうした問題に生産界全体が心を一つにして、創意エ夫をして真摯に取り組み、解決の道筋をつけなければならないと思います。
2024年、競馬界は新たに「全日本的なダート競走の体系整備」に取り組みます。特に3歳ダート三冠競走の創設は競馬ファンの関心を集めるでしょうし、3歳ダートチャンピオンを決定することで、その競争はさらに厳しくなり、日本産馬の更なる資質向上につながるものと期待しています。
本協会の種牡馬も手をこまねいて見ているわけにはいきません。昨年は世界の舞台米国のブリーダーズカップにおいて、短距離戦では今年デビューを迎えるノーブルミッション(GB)産駒と活躍馬を次々に輩出するデクラレーションオブウォー(USA)産駒がワンツーフィニッシュ、2歳戦でも新進気鋭のカラヴァッジオ(USA)産駒が2着の活躍を見せています。
さらに本年供用の新種牡馬として北米の2歳総合・ファーストクロップサイアーズランキング勝馬頭数首位のシャープアステカ(USA)を導入し、陣容を厚くしています。みなさまにご活用いただけるよう全力で取り組んで参ります。
本年はまたもう一つイベントがございます。世界の主要なサラブレッド生産国・組織の25メンバーで構成される国際サラブレッド生産者連盟(ITBF)の会議をわが国で開催することになっています。日本では2006年以来の開催で、日程は5月18日~24日を予定しています。ITBFの総会、獣医師会議の他、北海道のみなさま方の種馬場、育成牧場も訪問する予定です。どうぞご協力をよろしくお願いします。
新しい年がみなさまにとって、素晴らしい年になるよう祈念いたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。
会長理事