JBBA NEWS

2023年2月号(VOL.601)

最新の第338便は 53年、ひとりで烏森発牧場行き

吉川 良/よしかわ まこと

 2022年の有馬記念の日、午後1時からはグリーンチャンネルとの仕事の約束があるので自由はないと思い、午前中に中山競馬場をうろつきまわった。パドックを見つめ、馬券を買うほかに、私の場合、競馬のことを書く仕事の都合で、競馬場の空気を、うろつきまわって吸いあげるのも、長年の習性なのである。競馬場にはいろいろな人が来る。そのいろいろな人の表情、ふるまい、会話などに触れるのも、私の競馬なのだ。2022年の有馬記念の中山競馬場をうろつきながら、ふと、気になりはじめたことがあった。スタンドにも、パドック辺りにも、オジさんとジイちゃんが少ないなあと思ったのである。コロナ禍の前の有馬記念の中山競馬場には、もっと、オジさんとジイちゃんがいたよなあと思ったのだ。(中略)有馬記念のあくる日の午後、私の家からはバスで20分ほどの藤沢市のアパートに住む佐々木岩男さんから、昨日は中山へ行ったのか?って電話がかかった。「考えてみたら、おれ、コロナで駄目だった去年とおととしは別にして、それまで、カブトシローの有馬からリスグラシューの有馬まで、有馬は欠かさずに中山へ、ひとりで行ってるんだよね。計算してみたら、53年。おれ、53年、有馬を見に行ってるんだ、ひとりで。昨年は中山へ入れないから、仕方なく、横浜の場外へ行くって決めてたんだけど、朝からなんだかメマイがひどくて、無理したらどこかで倒れると思って、泣き泣き、馬券も買わずに、テレビ見てた。こんな有馬、初めてだって、泣きたくなったけど、ま、仕方ねえってあきらめた。ほんと、アリマでなくて、アレマー記念だ」と岩男さんが笑った電話のあと私は、カブトシローからリスグラシューまでの53年、岩男さんはひとりで、中山で有馬記念を見ていたのだとあらためて思った。(略)

第143回は「代表」 第5コーナー ~競馬余話~

有吉 正徳/ありよし まさのり

 JRAは2023年1月10日、2022年度のJRA賞受賞馬選考委員会を開き、競走馬10部門の受賞馬を決定した。年度代表馬と最優秀3歳牡馬には、天皇賞・秋と有馬記念を制したイクイノックス(美浦・木村哲也厩舎)が選ばれた。イクイノックスは2022年、4戦2勝の成績を残した。秋は3古馬に挑むことになり、まずは天皇賞・秋に矛先を向け、レースでは、とても信じられないような後方から末脚を繰り出し、ゴール寸前でパンサラッサを捉えて優勝。1984年にグレード制が導入されて以降最少となるデビュー5戦目で「古馬GⅠ」を制してみせた。有馬記念でも危なげなく勝って、有馬記念史上最少記録となるデビュー6戦目での優勝を実現した。対象年に4走で年度代表馬になったのは6頭目で出走回数は最少だと筆者。近年の傾向として一流馬ほど年間の出走回数は減りつつある。2013年のロードカナロア以降、ジェンティルドンナ、モーリス、キタサンブラック(2年連続)、アーモンドアイ(2回)、リスグラシュー、エフフォーリア、そしてイクイノックスとこの8頭はいずれも年間6戦以下のレース数で年度代表馬に選ばれている。イクイノックスのように数々の最少キャリア記録を塗り替えていく一流馬は今後も増えていくだろうと筆者。

第155回は「今年もGⅠ初制覇ジョッキーの誕生を願う~馬作りは人作りの船橋競馬~」
ホソジュンのウマなりトーク

細江 純子/ほそえ じゅんこ

 昨年のGⅠ戦線を振りかえると、初GⅠ制覇を成し遂げた騎手が5人もいたことが実に印象的かつ嬉しく思う年だったと筆者。騎手7年目・荻野極騎手、同じく7年目の坂井瑠星騎手、9年目・石川裕紀人騎手、12年目の横山和生騎手、そして16年目・丸田恭介騎手と、外国人騎手の短期免許や地方競馬からのトップジョッキーの移籍がある中で手にした価値と重みある勝利。本人はもちろんのこと、若手騎手など、周りにとっても良い意味で与える影響も大きかったように思えますし、後日、若手騎手に会うと、調整ルームやジョッキールームでは、レースに騎乗をしていない騎手たちが一丸となって声援を送り、盛り上がっていたとのこと。昨年から船橋所属の騎手の方々と対談をしているのですが、「厩務員さん方の腕が凄い。時間のかけ方など。また川島厩舎にいた腕利きと言われる方々が、今もなお新たな厩舎で活躍馬を作りあげてもいる」と、皆、口を揃えます。そして騎手同士も非常にまとまりがあり、各々がそれぞれの個性や歩みを理解し、時には助言を、そして時にはリスペクトや感謝の言葉も口にされる。その背景には馬を育てるように、人も育てるという諸先輩方からつながる伝統があるようだと筆者。

第170回は『初めての講演会』北海道馬産地ファイターズ

村本 浩平/むらもと こうへい

 まさに、寝耳に水だった。発した言葉を聞き取ってもらえないと思ったのか、スマホの向こうから声を発している(有)平野牧場の平野謙二代表は、先ほどと同じ言葉を告げてくる。「今度、三石軽種馬生産振興会で講演会をやるんだけど、もし良かったら村本さんに講演をしてもらえないかと思いまして!」二度同じ言葉を言われても、やはり、それが事実とは受け取れず、先ほどと同じように、「はあ…」との返答しかできなかった。とここまで読んでみて、これはデジャヴ?もしくはどこかで読んだことがあるぞ、と思った方、これは第166回のコラムである、『九州再上陸』の書きだしを書き換え。カッコよくいうところのセルフカバーである。というか、寝耳に水ということばかりが起こった2022年。その締めとなるのが年末から年始にかけて筆者を襲った、新型コロナウイルス発症だったというのも、オチとしてはでき過ぎだと筆者。と話は平野会長からの電話に戻るのだが、「それで今回は村本さんに、SNSの使い方といったテーマで何か話してもらえないかと思ってるんだけど」とお題のテーマが発表された。しかし、SNSの使い方との講演テーマとは、自分にうってつけ…ではなかった。

(次号に続く)

第170回は『NAR GRANDPRIX2022』馬ミシュラン

小山内 完友/おさない ひろとも

 1月12日、地方競馬全国協会会議室に於いて、「NAR GRANDPRIX 2022優秀馬選定委員会」が開催された。今年も選定委員の末席に加えさせていただいたので、印象に残った部門を中心に選定委員会の模様をお伝えさせていただく。2歳最優秀牡馬部門にダートグレード競走勝ち馬はいなかったが、地方全国交流競走の勝ち馬が4頭。最終的には全日本2歳優駿(JpnⅠ)4着のヒーローコールが選ばれた。2歳最優秀牝馬部門も東京2歳優駿牝馬の勝負になり、メイドイットマムが選ばれた。3歳最優秀牡馬部門も、ダービーグランプリでの直接対決勝負になり、シルトプレが選出。3歳最優秀牝馬はスピーディキック。関東オークス(JpnⅡ)に勝っていれば年度代表馬もあった。4歳以上最優秀牡馬部門は、JpnⅢではあるがダートグレード競走2勝で、秋はJpnⅠに出走し、南部杯(JpnⅠ)では一瞬夢を見た4着と勝ち負けの争いに絡み、JBCスプリント(JpnⅠ)でも5着と好走したイグナイターが満場一致で選ばれた。4歳以上最優秀牝馬は文句なしでサルサディオーネ。最優秀短距離馬部門も、JpnⅢ2勝のイグナイター、最優秀ターフはすんなり「該当馬なし」。
 年度代表馬は4歳以上最優秀牡馬のイグナイターが選ばれた。ダートグレード競走発足後、JpnⅠまたはⅡの勝利がない馬の選出は初めてで、個人的にはなんとなく破ってはいけない壁を破ってしまった感じはするが、年間の競走成績は年度代表馬に相応しい結果だったと思う。ダートグレード特別表彰馬は地方のダートグレード競走最多4勝のショウナンナデシコに手を挙げたが、一番難しい選択だったと筆者。

繁殖牝馬セール成績

・2023年ジェイエス冬季繁殖馬セール

海外情報

2022 北米サイアーズランキング(獲得賞金順) 総合・2歳・ブルードメアサイアー
2022 英愛サイアーズランキング(獲得賞金順) 総合・2歳・ブルードメアサイアー
2022 仏サイアーズランキング(獲得賞金順)  総合・2歳・ブルードメアサイアー
2022 独サイアーズランキング(獲得賞金順)  総合・ブルードメアサイアー

トピックス

・2022年度JRA賞
・NARグランプリ2022/2022ダートグレード競走特別賞
・2022年度JRA生産者団体表彰成績
・JBBAからのお知らせ 2023年産駒報告のオンライン受付を開始しました
・JBBAからのお知らせ 馬の新生子黄疸予防に係る検査の終了について
・2023年世界のせり日程
・2022年JRA外国産馬の競走成績
・2022年トレーニングセール取引馬の2歳競走成績
・2023年サラブレッドせり市場日程(予定)

種牡馬事業

・STALLION NEWS ARCHIVE(スタリオンニュース・アーカイヴ)

地方競馬ニュース

・地方競馬場別サイアーズランキング 2022年1月~12月
・2022年12月 地方競馬場の売り上げ

生産関連ランキング

・2022年各種最終ランキング掲載!
・2023年1月各種ランキング

From 競走馬のふるさと案内所・連絡センター

レポート(日高案内所・胆振連絡センター・十勝連絡センター・東北連絡センター・千葉連絡センター・南九州連絡センター)

The First Win
 JBBA 会員生産の初勝利馬一覧(2022.12.10 ~ 2023.1.7)

表紙

・イクイノックス 第67回有馬記念(GⅠ)優勝
・イクイノックス紹介
・ザファクター(USA)産駒 ショウナンマグマ紹介
・JBBA種牡馬 カラヴァッジオ(USA)

JAIRSコーナー((公財)ジャパン・スタッドブック・インターナショナルコーナー)etc

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