JBBA NEWS

2022年12月号(VOL.599)

最新の第336便は 秋、祈り烏森発牧場行き

吉川 良/よしかわ まこと

 ウクライナのキーウ近郊ボロジャンカで2022年10月、電力危機に見舞われ、明かりに使うローソクを手に、窓の外を見つめるバアさん。新聞にあった、その写真を見て、見つめて、ウクライナを破壊しているロシアのボスが、この写真を見たら、どんなふうに感じるのだろうかと私は思った。ひょっとして、そのボスは、母親から生まれた生きものではないのかも。では、何から生まれた生きものなのだろう。「窓から見つめるバアさん」と書いて、私が女房のことを「うちのバアさんが」と話をするものだから、「バアさんという言い方はやめなよ」と言う友だちの顔が浮かんだ。それはその友だちだけでなく、ほかの人からもよく言われるのである。それで私はそのことを本人にも聞くと、「わたしも嫌だ」という返事。(中略) 「祈り。祈りかなあ。人生って、言ってしまうと、信仰を持つとか持たないとかは関係なく、祈りに支えられているのかなあ」と田中千世子が言った。夜、京都のホテルで食事をした。「長いつきあいなのに、どうして競馬と出会ったのか、聞いてなかったなあ」「ぼくが新潟勤務時代に、まだ会社に就職する前の千世子が新潟競馬場でバイトしたんです。もともとぼくは馬券をやってたし」「武豊がデビューして2年目だったかな、検量室とかで雑用していて、いろいろな騎手たちとも冗談を言ったり」「そうか。それでフロンティアの感動があったわけだ」と私が言った。(中略) 10月28日、上村のハンドルで私らは、京都大原の三千院へ行った。「一隅を照らす。これ則ち国宝なり」とは、自分にとってどんな意味があるのかとか考えながら、杉木立ちのなか、廊下に座って庭を眺める。往生極楽院の屋根に、秋のやさしい陽差しが降り注いでいた。「この三千院の先の川に、明け方に家を出て鮎を釣りに行くんですわ。業者から仕入れたんでは赤字やしね」そんな上村の話を聞きながら、50歳で店を持ち、コロナ禍とたたかいながら「ほたる」を守っている上村高史の人生も、田中千世子の言う「祈り」につながるのかな、と私は思った。10月30日、ホテルニューオータニでの、タイトルホルダー「宝塚記念祝賀会」へ行く。光栄にも私は、馬主の山田弘から、乾杯の音頭を頼まれていた。「ぼくは何度も何度も、牧場で山田弘が、馬を見つめている姿を見ています。馬を見ている人には、それぞれの金のことや人間関係のことが重なっているでしょうが、そのとき、ふと、山田弘は少年にもなっている。その山田少年が、ついにサウンドトゥルーと出会い、タイトルホルダーと出会った。(略)

第141回は「菊花」 第5コーナー ~競馬余話~

有吉 正徳/ありよし まさのり

 10月23日に阪神競馬場で行われた第83回菊花賞は2番人気のアスクビクターモア(牡3歳、美浦・田村康仁厩舎)が優勝した。勝ちタイムの3分2秒4(芝3000メートル)はナリタトップロードが2001年の阪神大賞典でマークした3分2秒5を21年ぶりに更新するコース新記録だった。手綱を取った田辺裕信騎手(38)は2016年の安田記念(ロゴタイプ)以来6年ぶりのGⅠ3勝目で、クラシックは初制覇となった。レースはセイウンハーデスが先手を取り、ハイペースで流れた。1000メートル通過が58秒7、2000メートル通過が2分1秒4。アスクビクターモアはこの展開を2番手で進み、2周目の4コーナーで先頭に立つと、そのままゴールまで押し切った。積極的に動いた分、最後は後続に詰め寄られたが、2着ボルドグフーシュの追い込みをハナ差抑えた。京都競馬場が改修のため2021、2022年の2年間、菊花賞は阪神競馬場に舞台を移して行われた。2021年がタイトルホルダー、2022年がアスクビクターモアと2年連続して、茨城県の美浦トレーニング・センターを本拠にする「関東馬」が優勝した。関東馬の菊花賞連勝は1991年レオダーバン、1992年ライスシャワー以来30年ぶりのことだった。アスクビクターモアはディープインパクトの12世代目の産駒として2019年に生まれた。ディープインパクトは2019年7月に急死し、この年は20頭あまりの種付けにとどまっている。アスクビクターモアを含む12世代目が実質上の最終世代といっていい。そんなディープインパクトの「最終世代」には今年、大記録がかかっていた。それは初年度産駒からの連続クラシック制覇だった。2005年、無敗のまま皐月賞、日本ダービー、菊花賞を制し、史上6頭目の三冠馬に輝いたディープインパクトは2006年の有馬記念優勝を最後に現役生活に幕を下ろした。通算14戦12勝。GⅠは7勝を挙げた。2007年に種付けを開始すると、数多くの繁殖牝馬がディープインパクトの下に集まった。1年目から215頭に種付けし、このうち147頭が血統登録を行い、104頭が勝ち馬になっている。この世代の147頭の中に後の桜花賞馬マルセリーナがいた。ここでクラシックレースを制したディープインパクト産駒を世代ごとに紹介しようと筆者。

第153回は「JBC競走優勝生産者インタビューに胸を打たれる ~試行錯誤の連続の中に変わらぬ本質の存在を感じる~」
ホソジュンのウマなりトーク

細江 純子/ほそえ じゅんこ

 2022年も、終わりを告げようとしているのですね…。1年を振り返って、皆さまはどんなことが1番思い起こされますか?私は数多くあったレースの中でも、JBC競走における生産者インタビューが1番、胸に残るものでした。昨今、競馬の売り上げはいいものの、その一方で、騎手や厩務員に志願する人の数は減っている傾向に。また昔からの競馬好きの知人たちは、口を揃えて、「一昔前の競馬の方が面白かった。もちろん今でも馬券を買うのは買うけど、何か重さがないというか…熱い思いでレースを見られていない自分がいる」と。確かに私自身も同じ思いで、馬券の配当以上に、この馬に、この騎手に、この担当者の馬作りに馬券を賭けているといった感覚よりも、配当重視に移行している自分が存在。この背景には、厩舎での在厩期間が短くなったことで取材をする側のペンが走らないことや、乗り替わりが主流となり、騎手とセットで応援し続ける形が薄れていることなど、様々な要因があるように思えます。もちろん、どちらが良いとか悪いという話ではなく、時代とともに競馬のスタイルが変化し、それに伴い、お客さんの層も変化しているように感じたと筆者。

第168回は『九州再上陸 PartⅢ』北海道馬産地ファイターズ

村本 浩平/むらもと こうへい

 生まれて初めて小倉競馬場に行く契機となった、週末二日間でのビギナーズセミナーの講師。そして、日曜日のメインレースとして行われた北九州記念の予想イベントだが、関係者の皆さんのご協力もあって、何とか無事に終えることができた。やはり、重賞レースの開催もあってか、土曜日よりも日曜日の方が入場者も格段に多かった。肝心のイベントだが、大荒れとなった北九州記念の予想は外れたものの、同日の札幌記念の予想は◎ジャックドール-〇パンサラッサで見事に的中。当日、小倉競馬場にお越しの競馬ファンの方々にも、「あいつ、番組では良く噛んでいるけど、予想は当たるじゃねえか」と思っていただけたのではないかと思う。思えばコロナ禍となってから、開催中の競馬場に入れたのは、今年の夏からだった。小倉の前にも、函館と札幌でビギナーズセミナーの講師として立ち入っていたものの、その時よりも競馬場内に開放感のような雰囲気が感じられたのは、九州まで来たという自分の気持ちもあったのかもしれない。ただ、自分を招いてくれた地元の広告代理店の方に話を聞くと、小倉の競馬開催では九州どころか、関門海峡を挟んで本州からも競馬ファンがやってくるという。前回のコラムでも書いたように、小倉には競輪の発祥の地でもあり、GⅠ競輪祭が開催される小倉競輪場だけでなく、同じ北九州市内には若松ボートレース場(実は行ってきました)に加えて、対岸の本州には下関ボートレース場がある。
 しかも、福岡県内に範囲を広げると芦屋ボートレース場だけでなく福岡ボートレース場、九州では唯一オートレースが開催されている飯塚オートレース場もあるという、まさに公営競技ファンにはたまらない地域と言える。そうした公営競技の中でも小倉競馬場は、家族連れというファミリー層の姿といった、幅広い年齢層のファンに受け入れられているように見受けられた。そこに、夏の暑さにも負けない来場者の熱が、カラっとした開放感を増幅させていたのかもしれない。それは九州が馬産地であることも、関係しているのではないかと思うと筆者。

第168回は『第22回JBC』馬ミシュラン

小山内 完友/おさない ひろとも

 「11月3日は何の日?」と聞かれれば、世間一般の方々は「文化の日」と答えるだろう。国民の祝日に関する法律の第2条に「自由と平和を愛し、文化をすすめる」と趣旨が定められている。そして、我々競馬ファンにとっての11月3日は「JBC」である。こちらは残念ながら競馬法で「JBCの日」とは定められてはいないが、毎年、JBC特設サイトやパンフレット等において必ずJBCの説明が書かれている。
 今年は「JBCの意義」「競馬と生産の関係」「本家ブリーダーズカップ創設の背景」「JBCの創設」「JBCの新たな役割」以上5章に分けて説明されている。多分読まれる方はあまりいらっしゃらないとは思うが、興味のある方は一度読んでみていただきたい。一般的なファンの認識としては「地方競馬の祭典」ということになるのではないかと思う。2001年に創設されたJBCは、今年で第22回を迎える。一番の特徴は持ち回りで開催されることだろう。大井競馬場から始まったJBCは、これまで盛岡、浦和、川崎、船橋、名古屋、金沢、京都、園田(順不同)の9場と、JBC2歳優駿が門別で行われている。この「持ち回り制」と、JBCクラシックの「1着賞金1億円」がウリであったが、「1億円」はその後減額となり、今年再び戻っている。持ち回りの方は、水沢(盛岡と同じ岩手県競馬組合)、笠松、姫路(園田と同じ兵庫県競馬組合)、高知、佐賀の各競馬場では未だ開催されていない。(JBC本体という意味では門別も未開催地)そのあたりはファンの間でも、「まだかまだか」と待ちわびている声がある反面、「やっぱりダメか」という諦めの声も聞かれると筆者。

協会会議

・2022年度 第2回JBBA/JRA生産等に関する協議会
・2022年度 地方競馬と生産に関する協議会

トピックス

・馬産地への支援措置が恒久化されました 競馬法の一部を改正する法律公布
・2022年 軽種馬後継者研修報告
・JBBAからのお知らせ 2022年生産全国馬名簿がJBBAから発行されました
・第22回獣医師生涯研修のご案内

海外ステークスウイナーズ

BCクラシック 1人気Flightline(USA)が伝説のSecretariat(USA)の走りに匹敵の圧勝披露、直後に現役引退表明
BCターフ 4人気Rebel's Romance(IRE)が道中ロスなく後方待機、直線外から豪快に伸びてまとめて先行馬を交わし快勝
BCディスタフ 2人気Malathaat(USA)が追い込みに徹し、大外からゴール前急追ハナ、ハナの接戦を制す
BCジュベナイル 2人気Forte(USA)が1人気Cave Rock(USA)の逃げに照準を合わせて追撃、ゴール前交わす
BCジュベナイルフィリーズ 2人気Wonder Wheel(USA)が内から伸びて波乱の結末に、1人気Chop Chop(USA)は最下位敗退
BCその他レース勝馬紹介

生産対策関連

・2022(令和4)年度JBBA/JRA生産等に関する協議会 協議結果の概要

種牡馬事業

・STALLION NEWS ARCHIVE(スタリオンニュース・アーカイヴ)

海外流通促進

・海外競馬で活躍中の日本産馬(市場取引馬)

地方競馬ニュース

・2022年10月 地方競馬場の売り上げ
・2023年 地方競馬開催日程(1月~3月)

生産関連ランキング

・2022年11月各種ランキング
・2022ファーストクロップサイアーズランキング掲載中!

From 競走馬のふるさと案内所・連絡センター

レポート(日高案内所・胆振連絡センター・十勝連絡センター・東北連絡センター・千葉連絡センター・南九州連絡センター)

The First Win
 JBBA 会員生産の初勝利馬一覧(2022.10.15 ~ 2022.11.13)

2022総索引  2022 JBBA NEWS 総索引

表紙

・JBBA新種牡馬カラヴァッジオ(USA)
・カラヴァッジオ(USA)紹介
・2023JBBAサラブレッド種牡馬配置表
・JBBA種牡馬デクラレーションオブウォー(USA)産駒トップナイフ紹介

JAIRSコーナー((公財)ジャパン・スタッドブック・インターナショナルコーナー)etc

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