JBBA NEWS

2022年6月号(VOL.593)

最新の第330便は Fくんとか私とか烏森発牧場行き

吉川 良/よしかわ まこと

 2022年2月24日、私の85歳の誕生日に、ロシア軍がウクライナに侵攻し、それから毎日、ウクライナの建物が破壊され、人間が殺されるのをテレビで見て、プーチンさんよ、あなた、間違っているよ、と私は言いたくて、一日も早く戦争をやめてくれ、と祈りたくて、私は私なりに、何かしたいと考えた。それで私のしたことは、ロシアの作家のアントン・チェーホフの本を5冊、書棚から抜き、仕事机の隅に積むことだった。たぶん、ウラジーミル・プーチンは、チェーホフの文章を読んだことはないだろう。もし読んでいたら、そんな間違いはしなかっただろうな、という思いからの、私のせめてもの祈りである。私は勝手にアントン・チェーホフ(1860年に南ロシアの港町タガンローグで生まれ、1904年、南ドイツの保養地バーデンヴァイラーで死去)を人生の師匠として生きてきた。(中略)古書店で見つけた「チェーホフの手帖」というのは私の聖書になった。「誰かから百円を恵まれ、これで何かやってごらんとチャンスをもらう人間と、その百円を持つために一生が過ぎてしまう人間がいる」と読み、そうだよなあ、人間はその2種類がいるんだよなあと私は感心した。「主人を自慢することで生きている人をドレイと言い、自分には自分の血が流れていると感じて生きてる人をニンゲンという」と読み、本当、そうだ、おれのまわりにも、自分のいる企業を自慢して生活してる人がいるよなあと、私はチェーホフの言葉がうれしい。(略)

第135回は「砂娘」 第5コーナー ~競馬余話~

有吉 正徳/ありよし まさのり

 2022年5月15日の第17回ヴィクトリアマイル(東京競馬場芝1600メートル)は単勝4番人気のソダシ(牝4歳、栗東・須貝尚介厩舎)が1分32秒2のタイムで優勝した。2歳時の阪神ジュベナイルフィリーズ、3歳時の桜花賞に続く3年連続のGⅠ制覇となった。2歳時のアルテミスSを含めると、芝の1600メートル戦では負け知らずの4戦4勝とした。
 オジュウチョウサンと並び、ぬいぐるみの売り上げで上位を争う現代の「アイドルホース」がソダシだ。人気も実績もあるソダシが、ヴィクトリアマイルではなぜ4番人気にとどまったのか。考えられる要因はそのステップだ。芝のGⅠ勝ち馬で前走がダート戦だった例は、2013年12月の朝日杯フューチュリティSを制したアジアエクスプレス(USA)、2004年5月の天皇賞・春を逃げ切り、波乱の主役になったイングランディーレ。アグネスデジタル(USA)は中央競馬での芝GⅠ3勝すべてをダート戦の直後に挙げている。2000年のマイルチャンピオンシップの直前は武蔵野S(ダート1600メートル)、2001年天皇賞・秋の前走はマイルチャンピオンシップ南部杯(ダート1600メートル)、2003年安田記念は、1年ぶりのかきつばた記念(ダート1400メートル)からのステップ。トゥザヴィクトリーは2001年3月ドバイワールドカップ(ダート2000メートル)で2着、帰国後、ぶっつけで向かった11月のエリザベス女王杯(GⅠ)で勝利した。いずれも単勝1番人気ではなかった点で共通している。ヴィクトリアマイルは桜花賞馬が強い。2020年がアーモンドアイ、昨年がグランアレグリアで、今年がソダシと3年連続で桜花賞馬が優勝、さらにさかのぼるとダンスインザムード、ブエナビスタ、アパパネと3頭の桜花賞馬が加わると筆者。

第147回は「転機を迎えた藤田菜七子騎手~環境を変え現状打破に挑む姿勢~」
ホソジュンのウマなりトーク

細江 純子/ほそえ じゅんこ

 最近、周囲から、「今、たくさんの女性ジョッキーが頑張っているね」と声をかけられる筆者。現役騎手148名中4名ではあるが、一昔前に比べると数もさることながら、1人1人の活躍も目覚ましく、その印象も強いのではと筆者。しかも現在、関東唯一所属の女性騎手・藤田菜七子ちゃんも栗東に在住。話を聞けば、年数とともに乗り鞍の減少もあり、何か行動を変えなければ現状は変わらないとの思いから栗東へ。そして、乗馬の達人揃いの藤原厩舎で、一から馬乗りを学び直しており、角馬場では鐙をあげて騎乗も。「根本的な考え方が覆されることもあり、とにかく毎朝必死で乗っています」と。16年振りの女性騎手としてたった1人でデビューし、その歩みにより現在の女性騎手たちは4キロ減でのスタート。まさに彼女の功績あっての恩恵といえ、その頑張りだけでも凄いことなのに、後輩騎手が続々とデビューをし、年数による壁を迎えた今、再度初心に戻り、環境を変え挑戦し続ける彼女の姿が本当に美しく映ったと筆者。筆者も、騎手として煮詰まった際、シンガポールに渡り、1か月間騎乗した経験があり、周囲が誰も自分を知らないおかげでゼロからのスタートが切れたように思えると。後日談として、20年の交流を持つベテラン記者が、何かの話の流れの中で、「俺が唯一ホソエの凄いと思う点は、1人で海外に乗りにいったこと。なかなか、ああいった勇気は持てない」と、その言葉が今でも私の心を温かくしてくれていると筆者。

第162回は『ゴールデンカムイ』北海道馬産地ファイターズ

村本 浩平/むらもと こうへい

 コミックス29巻での累計発行部数が1,900万部を突破。この後には第30巻、そして第31巻の発売も控えており、間違いなく2,000万部を超えるであろう大ヒット漫画が、週刊ヤングジャンプに掲載されていた『ゴールデンカムイ』である。原作者の野田サトルさんは、北海道北広島市出身。この漫画の主人公である杉元佐一は、屯田兵となった自分の曽祖父をモデルとしている。その杉元と、この漫画のヒロインでもあるアシリパが、明治後期の北海道を舞台に、アイヌの残した埋蔵金を探し求める『冒険・歴史・文化・狩猟グルメGAG&LOVE! ホラー』漫画(22巻の紹介文より抜粋)なのだ。その『ゴールデンカムイ』の中で、苫小牧勇払地区に存在していた、苫小牧競馬場での競馬を題材にした回(第61話蝦夷地ダービー~第62話替え玉騎手キロランケ)がある。この2話では白石由竹という、この作品のムードメーカー的なキャラクターが、占いを得意とする、インカラマッというアイヌの女性に勝ち馬を占ってもらい、その結果を元に資金を増やしていくも…という、誰もが想定するオチが待っている。野田さんにはいつかは競馬を題材に、その見事な画力と読むものを飽きさせないストーリー展開で描いてくれないかと思うばかりであると筆者。

第162回は『南関クラシック展望』馬ミシュラン

小山内 完友/おさない ひろとも

 今年の南関東牝馬クラシック路線は、当初よりスピーディキックが有力視されていた。エーデルワイス賞(JpnⅢ)に勝ち、有力馬が揃った東京2歳優駿牝馬では2着ヒストリックノヴァに4馬身の差を付け、初の左回り、小回りコースを不安視された桜花賞で不安を一掃し、単勝1.4倍の圧倒的人気に推された東京プリンセス賞も人気に応え、期待された通りに2冠を決めている。益田競馬場出身の御神本騎手、藤原調教師、末田厩務員の「チーム益田」も話題になった。
 一方で、スピーディキックが強すぎるので別路線に活路を求める馬も多くなっている。3歳シリーズのポイント順位は、最終戦の関東オークス前の時点で、1位グラーツィア(30ポイント)、2位スピーディキック(17ポイント)、3位ケウ(16ポイント)となっている。気になるのはスピーディキックの次走だ。レース後藤原調教師は「次走は東京ダービー(6月8日)か関東オークス(6月15日)」と。関東オークスには3戦3勝で伏竜ステークスに勝ったデリカダが出走を表明しているので、両馬の対戦を観たい気もすると筆者。
 牡馬の第一冠・羽田盃は9番人気のミヤギザオウがインコースからクビ差差し切った。2着13番人気のライアン、3着に1番人気のシャルフジンだった。1~5番人気が連対を外した年の東京ダービーは……と思って調べたら、なかった。近いのは2012年で、1着が8番人気のアートサハラ、2着3番人気のエミーズパダイス、3着が同着で、11番人気のプレティオラスと9番人気のジャルディーノだった。ではその年の東京ダービーはどうなったかというと、6番人気のプレティオラスが勝ち、2着3番人気のプーラヴィーダ、3着1番人気のエミーズパラダイス。今年の羽田盃は前半1000mが59秒5、2012年は59秒3。60秒を切ったのは、実は2012年以来だった。顔ぶれから今年の東京ダービーはハイペースとなる可能性が高い。陣営にとっては波乱、ファンにとっては好配当。そんな東京ダービーが(勝手に)目に浮かぶと筆者。

協会会議

・2022(令和4)年度第3回理事会(書面決議)

せり市場成績

・北海道トレーニングセール サラ2歳
・千葉サラブレッドセール サラ2歳

海外ステークスウイナーズ

ケンタッキーダービー 繰り上がり出走、現地最低人気、大外枠のRich Strike(USA)が内から追い込み波乱の主役を演じる
英2000ギニー 最内枠3人気Coroebus(IRE)が中団後方に構え抜け出す、僚馬1人気Native Trail(GB)は2着
プールデッセプーラン(仏2000ギニー) Godolphinの自家生産馬、1番人気Modern Games(IRE)が残り300メートルで力強く抜け出す
ケンタッキーオークス 3番人気タイ、最内枠のSecret Oath(USA)が4コーナーから先頭並走し優勝、1番人気Nest(USA)下しG1初制覇
英1000ギニー 8番人気Cachet(IRE)が好スタートから逃げ切り J.ドイル騎手は2000ギニーに続きギニー連覇
プールデッセプーリッシュ(仏1000 ギニー) 英1000ギニー馬Cachet(IRE)との抜きつ抜かれつのデッドヒートを制して5番人気Mangoustine(FR)が戴冠

トピックス

・2022生産関連統計
・2022JRAブリーズアップセール
・未来のジョッキーを目指せ!「2023(令和5)年度騎手課程生徒」募集!
・日本装削蹄協会 2023(令和5)年度装蹄師認定講習会受講生募集

種牡馬事業

・STALLION NEWS ARCHIVE(スタリオンニュース・アーカイヴ)

地方競馬ニュース

・2022年4月 地方競馬場の売り上げ
・地方競馬所属別在籍頭数/サラ系統(2022年4月1日現在)
・地方競馬開催日程 2022年【7月~9月】

生産関連ランキング

・2022年5月各種ランキング

From 競走馬のふるさと案内所・連絡センター

レポート(日高案内所・胆振連絡センター・十勝連絡センター・東北連絡センター・千葉連絡センター・南九州連絡センター)

The First Win
 JBBA 会員生産の初勝利馬一覧(2022.4.19 ~ 2022.5.14)

カラーグラビア

・JBIS Live中継 九州1歳市場
・JBIS スマホでせりカタログを持ち歩こう!

表紙

・第83回オークス スターズオンアース
・スターズオンアース紹介
・2022 八戸市場ポスター
・2022 九州1歳市場ポスター

JAIRSコーナー((公財)ジャパン・スタッドブック・インターナショナルコーナー)etc

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