JBBA NEWS

2022年2月号(VOL.589)

最新の第326便は なんもかも烏森発牧場行き

吉川 良/よしかわ まこと

 2021年12月5日のこと、中京競馬11R、第22回チャンピオンズCの16頭がゲートを飛び出し、テレビにかじりつきそうに見ているうちのバアさんが、「6番、6番、6番」と、祈るように呟いている。(中略)バアさん、競馬のことを書くのが仕事の私と六十年近く暮らしながら、いっこうに競馬のことを知ろうとしない。そうなのだけれども、長いおつきあいをしている牧場の生産馬が出走すると、眼の色を変えて必死に応援をする。ソダシが崩れ、直線、するどく馬群を抜けだす6番に、「よしっ、よしっ、よしっ」とバアさんの声が飛び、2番チュウワウィザードに6馬身差の、テーオーケインズの圧勝だった。そのゴールインとほとんど同時にバアさんの指がスマホで動き、「おめでとう。よかった。すごーい」と声が跳ねる。その声の相手は、テーオーケインズを生産したヤナガワ牧場の弘子夫人だ。バアさんと弘子夫人は長いおつきあいの仲よしである。電話の相手が梁川正克さんに変わり、「心臓、大丈夫?」と私が聞いた。最近、正克さんが心臓の治療をしたのを知ってるからだ。正克さんも後期高齢者。仕事は息子の正普さんに任せているけれど、2017年有馬記念のキタサンブラック以来のGⅠ勝利に、心臓が躍ったにちがいない。「こういうことがあるから、なんもかも忘れて、また仕事が出来るんだよね。馬の仕事は、面倒なことも、イヤなこともたくさんあるけど、こういうことがあるから、なんもかも忘れちゃう」という正克さんの言葉が私に残って、電話のあと、「なんもかも」と私はひとりごとを言っていた。(略)

第131回は「連続」 第5コーナー ~競馬余話~

有吉 正徳/ありよし まさのり

 2022年1月15日、中京競馬場で行われた第59回愛知杯で武豊騎手(52)が騎乗したルビーカサブランカ(牝5歳、栗東・須貝尚介厩舎)が優勝し、2つの「連続記録」が樹立された。1つ目は武豊騎手の36年連続重賞優勝記録だ。武豊騎手はデビューした1987年から昨2022年まで35年連続で重賞勝ちを収めてきた。2番目は岡部幸雄元騎手の28年連続、3番目が蛯名正義元騎手の27年連続だから、この記録は今後も破られそうにない大記録だ。武豊騎手はデビュー年の1987年こそ重賞初勝利は10月の京都大賞典(騎乗馬はトウカイローマン)と後半戦にずれ込んだが、そのほかの年では、1988年は2月のきさらぎ賞(マイネルフリッセ)、1989年は3月のペガサスS(シャダイカグラ)など年初に重賞初勝利を決めている。2022年の愛知杯までに挙げたJRAでの重賞347勝を月別に分類すると、1月29勝、2月36勝、3月42勝、4月35勝、5月27勝、6月22勝、7月17勝、8月17勝、9月23勝、10月43勝、11月37勝、12月19勝という内訳になる。まんべんなく勝利を挙げているが、1月から3月までに計107勝を挙げており、四半期では最多勝。スタートダッシュを決めていることがわかると筆者。愛知杯で達成された連続記録のもう1つはキングカメハメハ産駒のJRA重賞15年連続勝利だった。初年度産駒のフィフスペトルが2008年の函館2歳Sで重賞初勝利を父にプレゼント。2年目の産駒アパパネが2010年に桜花賞、オークス、秋華賞を制し、史上3頭目の牝馬3冠に輝いた。その後も短距離界でロードカナロアが活躍。ドゥラメンテ、レイデオロが日本ダービー優勝馬となるなど、さまざまなタイプの産駒が出現した。2019年生まれの現3歳が最後の世代となる。JRAに残る種牡馬別の重賞連続年度勝利記録はパーソロン(IRE)の19年だ。あと4年。キングカメハメハの遺児たちにもう少し頑張ってほしいと筆者。

第143回は「飛躍的な活躍を見せたGⅠ5勝の横山武史騎手 ~新人騎手の勝利インタビューに感じること~」
ホソジュンのウマなりトーク

細江 純子/ほそえ じゅんこ

 昨年、飛躍的な活躍を見せた騎手と言えば、GⅠ・5勝を挙げた横山武史騎手。有馬記念で見せた冷静なレース振りもさることながら、レース後の勝利騎手インタビューでは、まず最初に前日の油断騎乗を謝罪し、最後も、「すみませんでした」という言葉でしめた彼。そして2日後に行われたホープフルSでは、レースにおける回顧のみに徹し、きちんと線を引いての内容にとどめていました。弱冠23歳にして、既に自分の置かれた状況と立ち位置、また物事の仕組みを理解しているように感じ心底感心。騎乗技術もさることながら、人格という意味でも、大きな器を感じ、魅了されてしまったと筆者。日本競馬においてどのような存在となっていくのか?楽しみで仕方がない一方で、良い意味で期待し過ぎないような形で、個人的には見ていきたいと筆者。最近、デビューした新人騎手の初勝利時や、ヤングジョッキーでの勝利騎手インタビューにおいて、多くの新人が、まず開口一番、「乗せてくださった馬主さん、具合の良い状態に仕上げてくださった調教師さん、調教助手さん、厩務員さんに感謝…」との声から始まる。その背景から透けるのは、関係者の方々に対して、良い子でいなければならないという風潮が見え隠れ。もちろん、彼ら彼女らが悪いというわけではなく、そういった環境が見えてしまうことが残念であり、子を持つ母の視点からしても、気の使いどころに、新人騎手たちの気苦労を感じてしまうところも…。インタビューを心待ちにしていたファンも1番聞きたいのは、そこではない気もすると筆者。

第158回は『マイスター・ハイスクール PARTⅣ』北海道馬産地ファイターズ

村本 浩平/むらもと こうへい

 「マイスター・ハイスクールの指定期間は3年間ながら、延長も可能であること。そして、北海道もマイスター・ハイスクールを存続する意向である」「マイスター・ハイスクールの指定期間が終えた3年後以降にも続けていく、むしろ、3年後を見据えた『3年間』にしていかなければとの思いはありました」(中西氏)中西氏は競走馬産業の仕事が多岐にわたっていることを生徒たちに説明するべく、競馬エージェントとして世界を飛び回っている岡さとみさんとZOOMを繋ぎ、海外の馬産業にまつわる授業を行った。今後は馬運車の運転手や、我々のような競馬マスコミといった競走馬産業の中にいる関係者を、講師として招くことも考えていると教えてくれた。「今年は進級した3年生たちが馴致を行うだけでなく、昨年と同様に2年生に知識や経験を教えていくこととなります。このように3年間という時間を有効に使うべく、様々な変更も行っています」「ゆくゆくは馬の仕事をしなくとも、馬のよき理解者になって欲しいと思いますし、できることなら日高へと戻ってきて、馬文化を伝えてくれるような人間になってもらいたいです。それだけに、馬好きの子供たちが進学したいと思えるような学校にしていかなければと思いますし、それを様々な場所で周知していきたいとも思います」(中西氏)自分もマイスター・ハイスクールの手伝いができないかと、ふと思った。競馬ライターになりたいという生徒たちがいるかどうかはともかくとして、一度ぐらいは「村本先生!」と呼ばれて、むず痒い思いをしてみたいと筆者。

第158回は『NAR GRND PRIX 2022』馬ミシュラン

小山内 完友/おさない ひろとも

 1月13日(木)、NARグランプリ2022優秀馬選定委員会が開催された。今年も選定委員の末席に加えて頂いたので、印象に残った部門を中心に振り返りたいと筆者。まず2歳最優秀牡馬・せん馬部門は、JBC2歳優駿2着+サンライズカップ1着のナッジに投票。採決の結果ナッジが選定された。2歳最優秀牝馬はすんなりスピーディキックだが、表彰対象の決め手となるレース選びで議論となった。これは何を意味するかと言うと、この馬は移籍しているので、表彰対象者(調教師、騎手、厩務員)が変わるのである。これも委員会の重要な仕事である。今年最大の見せ場は4歳以上最優秀牡馬・せん馬部門。対象馬は川崎記念、かしわ記念のJpnⅠ2勝馬カジノフォンテンと、地方馬初のJBCクラシック(JpnⅠ)勝ち馬ミューチャリー。レーティングも115で全く同じであった。各委員の意見陳述が延々と続いた。どの委員もひと言目には「難しい」と言い、ある委員は「2頭同時受賞は出来ないのか」と言い出し、表彰規程や選定の基準を確認したり。山野浩一さんがご存命の頃は度々あったが、久しぶりにそういう光景を見た。自分の中では既に決まっていた。2011年のフリオーソ以来となるカジノフォンテンのJpnⅠ年間2勝が優位と思っていた。延々と続いた議論が出尽くし、シーンとしたところで採決。結果カジノフォンテン6票、ミューチャリー8票で、4歳以上最優秀牡馬・せん馬はミューチャリーが選定された。ダートグレード競走特別賞は、地方競馬のダートグレード競走で優秀な成績を残した馬を、中央、地方にかかわらず表彰する部門。4歳以上最優秀牡馬・せん馬の結果にかかわらず、カジノフォンテンが妥当だと思いそのように述べた。採決の結果、カジノフォンテンが選定された。最後に特別表彰馬。重賞勝ちは地方競馬のみで、ブリーダーズカップ・ディスタフ(GⅠ)を制したマルシュロレーヌはダート競走の地位を大いに高めた。異議なし。今年は優秀馬選定委員会史に残るぐらい議論が白熱し、途中休憩が入るぐらい長時間に及んだ。最後に表彰馬、表彰者の皆様おめでとうございます。さらなるご活躍を期待していると筆者。

協会会議

・2021(令和3)年度 第7回理事会【書面決議】

繁殖牝馬セール成績

・2022年ジェイエス冬季繁殖馬セール

海外情報

2021 北米サイアーズランキング(獲得賞金順) 総合・2歳・ブルードメアサイアー
2021 英愛サイアーズランキング(獲得賞金順) 総合・2歳・ブルードメアサイアー
2021 仏サイアーズランキング(獲得賞金順)  総合・2歳・ブルードメアサイアー
2021 独サイアーズランキング(獲得賞金順)  総合・ブルードメアサイアー

トピックス

・2021年度JRA賞
・NARグランプリ2021/2021ダートグレード競走特別賞
・2021年度JRA生産者団体表彰成績
・JBBAからのお知らせ 2022年産駒報告のオンライン受付を開始しました
・2022年世界のせり日程
・2021年JRA外国産馬の競走成績
・2022年サラブレッドせり市場日程(予定)

種牡馬事業

・STALLION NEWS ARCHIVE(スタリオンニュース・アーカイヴ)

地方競馬ニュース

・地方競馬場別サイアーズランキング 2021年1月~12月
・2021年12月 地方競馬場の売り上げ

生産関連ランキング

・2021年各種最終ランキング掲載!
・2022年1月各種ランキング

From 競走馬のふるさと案内所・連絡センター

レポート(日高案内所・胆振連絡センター・十勝連絡センター・東北連絡センター・千葉連絡センター・南九州連絡センター)

The First Win
 JBBA 会員生産の初勝利馬一覧(2021.12.13 ~ 2022.1.15)

表紙

・エフフォーリア 第66回有馬記念(GⅠ)優勝
・エフフォーリア紹介
・2022 JBBA STALLIONS
・2022 JBBAサラブレッド種牡馬配置表

JAIRSコーナー((公財)ジャパン・スタッドブック・インターナショナルコーナー)etc

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