JBBA NEWS

2020年10月号(VOL.573)

最新の第310便は ビビリ 烏森発牧場行き

吉川 良/よしかわ まこと

 ひとりで電車に乗っていたり、ひとりで海を見ていたり、ひとりで何処かのベンチに座っていたり、ひとりで酒場にいたりする時、私の脳裡に1頭の牡の鹿毛馬が出てきて、「おお、ビビリ」と声をかける。ビビリが出てきてくれるひとときは、私の人生の幸せなのだ。1989(平成元)年のこと、春から夏にかけての3か月ほど、苫小牧市美沢で開業するノーザンホースパークのことで手伝う仕事があって、社台ファーム空港牧場(現在はノーザンファーム)で暮らしていた。朝起きて窓をあけると、すぐ近くに1頭だけのパドックがあり、いつもダイナターキンの87がいた。ダイナターキン(父ノーザンテースト、母シャダイターキン、母の父ガーサント)が1987年に出産した鹿毛の牡馬である。いつも1頭だけのパドックにいるのは、どこかに故障があるのか、ワケありだ。「いったいさ、こんなんでさ、戦争に行けるのかさ。無理だべ」と若い牧夫がダイナターキンの87を見つめながら言う。戦争、つまり競馬場でのレースのことだ。ダイナターキンの87は、社台レースホースの会員が集まる牧場ツアーのときに放馬して困らせたり、異常なこわがり屋として、牧場では臆病な馬として話題になっていた。(中略)そのビビリが、1992年11月1日、レッツゴーターキンという名前になっていたビビリが、東京競馬場の直線でトウカイテイオーやダイタクヘリオスを抜き、天皇賞のゴール板を真っ先に駆け抜けた。競馬を見ていて涙ぐんだのは初めてで、レッツゴーターキンの34.2倍の単勝を5,000円、その1点勝負をしていた私は、めまいがするほどうれしかった。(略)

第115回は「龍王」 第5コーナー ~競馬余話~

有吉 正徳/ありよし まさのり

 2020年9月13日、安田隆行調教師(67)が快記録を達成した。達成したのは「同一調教師の1日重賞2勝」だ。中央競馬では史上18度目のことだった まず中京競馬場で行われたセントウルSでダノンスマッシュ(牡5歳)が1番人気に応えて快勝すると、その10分後に中山競馬場で行われた京成杯オータムHではトロワゼトワル(牝5歳)がゴール寸前でひと伸びし、ハナ差の接戦を制して昨年に続く2連覇を果たした。1日重賞2勝を最初に達成したのは、1954年10月17日の伊藤勝吉調教師だ。1954年といえば日本中央競馬会(JRA)が創立された年。伊藤勝吉調教師は1961年に最多勝に輝くなどJRA通算657勝。JRA以前の1949年にタチカゼでダービーを制するなどクラシック7勝を挙げた名調教師だ。この日、伊藤勝吉調教師の管理馬フアイナルスコア(牡4歳)が京都記念・秋を制し、ロイヤルウツド(牡4歳)が目黒記念・秋で優勝している。JBISサーチによると2頭はともにニュージーランド産、とても珍しいケースだと筆者。2度達成した伊藤雄二調教師、音無秀孝調教師、堀宣行調教師が目立つ。このうち堀宣行調教師は安田記念とユニコーンS、同じ日に同じ東京競馬場で同じ福永祐一騎手とのコンビで達成したユニークな記録を持つ。橋口弘次郎調教師と堀宣行調教師はそれぞれドバイと香港で1日重賞2勝を達成していることも忘れてはならない。安田隆行調教師の1日重賞2勝には過去の17例にない唯一の記録が重なった。ダノンスマッシュもトロワゼトワルも、ともにロードカナロア産駒という共通点を持っていたのだ。この日達成されたのは「同一調教師の同一種牡馬による1日重賞2勝」という史上初めての快記録だった。ロードカナロアは安田隆行調教師が育てた最高傑作。さぞ気持ちのいい1日だっただろうと筆者。

第127回は「ライド・ライク・ア・ガール」 ~騎手や馬を題材にした数々の名画に想うこと~
ホソジュンのウマなりトーク

細江 純子/ほそえ じゅんこ

 「ライド・ライク・ア・ガール」もう皆さんは、ご覧になられましたか?第156回メルボルンカップを制した女性騎手ミシェル・ペインの物語。日本では7月から公開されていますが、第156回メルボルンカップといえば、日本馬フェイムゲームが1番人気に支持された1戦とあって、記憶に残っている方も多いことでしょう。しかもレースを制したのは最下位人気馬で単勝オッズは100倍超え。また勝利馬・プリンスオブペンザンスの母の現役時代は、栗東・松田国英厩舎の管理馬とあって、何かと日本との繋がりもある血統。しかもこの映画は、単に男性社会の中で夢を成し遂げた女性騎手の歩みだけではなく、親が子を信じることの真意や、物事の本質を見抜くことの大切さが描かれており、騎手目線だけでなく、様々な視点や角度から心に響く作品となっています。騎手や馬を題材にした数々の名画で私のベストは、「モンタナの風に抱かれて」。俳優ロバート・レッドフォードの監督作品です。今はステイホームの時期、私も、もう一度見てみようと思っていますと筆者。

第142回は『ゾース、馬ソリを引く PARTⅡ』北海道馬産地ファイターズ

村本 浩平/むらもと こうへい

 ゾース(シマウマと馬を異種交配された雑種馬)を乗馬にするために、シマウマの牡馬を購入した、新冠町内で生産牧場を営む田村義徳さん。繋養していたアパルーサとハフリンガーの牝馬に配合を試みると、牡、牝の双方で見事な縞模様が出たゾースが誕生した。知人からの誘いを受けて、その2頭のゾースは草ばんば大会へと出走。その噂を聞きつけて、会場であるむかわ町穂別へとやってきた筆者、というのが前回のあらすじである。先にレースへと出走したのは牡馬のしまじろう。ばんば用の馬具を付けるのに抵抗があるかと思いきや、そこは生産だけでなく、競走馬の育成も手がける田村さんの馴致もあってか難なくクリアしていた。このレースはしまじろうのような、体高がそれほど高くない馬たちによる4頭立て。ゲートに入ってから落ち着きを無くしたしまじろうは、スタートで出遅れてしまい、最後方からのレースを余儀なくされる。DNAには肉食獣の襲撃から生き抜くための「逃走心」はあれど、競馬向きと言える「闘争心」は無いのかと思いきや、第2障害で抜き去った4番手の馬が迫ってくると、「逃走心」に火が付いたのか一気にスピードアップ。さすがに前を行く2頭は交わせなかったものの、3位入着を果たして見せた。この後、もう1頭のゾースであるしまみちゃんも4頭立てのレースに出走、最下位に沈んだ。だがいつか、世界初となる「ゾース、草ばんば大会初勝利」の知らせが届いてくれるのではないかと筆者。

第142回は『在宅環境の充実を』馬ミシュラン

小山内 完友/おさない ひろとも

 少しずつ競馬場や場外発売所の入場が再開し、それにともない新聞の販売も再開となったが、コロナ以前の売上にはまだまだ全然届かないと筆者。無観客競馬の期間中は在宅投票のパワーばかり注目され、特に中央競馬は「グリーンチャンネル中央競馬全レース中継」の無料放送という、ある意味掟破りを繰り出し、売り上げ貢献に絶大な効果を発揮した。通常に戻った時には視聴者獲得の面で、「お試し効果」が必ず発揮されると予想している。「レースを観ることが予想向上には一番」と入社以来何度も言われ、それはその通りで、レースこそが最高の予想資料。それにお客さんが気付いたら、我々もいよいよ商売替えを検討しなければならないかもしれないと筆者。一方、地方競馬はネットの無料放送が充実しており、地上波の全レース(に近い)放送も競馬場によってはあるため、基本的に衛星放送は有料。中継だとタイムが表示されないし、ラップを取ることも難しい現状。地方競馬もファンサービス(業者サービスも)という面では、ラップや全体の展開図を中継映像に載せても良いのではないかと思うと筆者。在宅投票の増加はコロナ以前からの傾向でもあり、在宅環境の充実は映像とリアルタイムの情報がカギになると筆者。

せり市場成績

北海道セプテンバーセール サラ1歳

海外ステークスウイナーズ

ケンタッキーダービー 3人気 Authentic 大外枠から先手、G1 3連勝オッズオン1人気 Tiz the Law 突放す
ケンタッキーオークス 5人気 Shedaresthedevil 好発2番手、1人気 Gamine 競落し2人気 Swiss Skydiver 抑えレースレコード
ラトロワンヌS 1人気 Monomoy Girl 直線入口先頭楽勝 疝痛と筋損傷で'19全休
英セントレジャー 前走愛 L 圧勝3人気 Galileo Chrome 6月メイドン勝ちから4連勝で父産駒初 G1 勝ち
パリ大賞 5人気 Mogul ハイペース利し後方一気、全兄に続き父産駒3年連続4勝目
ウッドワードH 2人気 Global Campaign 前走 G3 に続き逃切り勝ち

海外セール成績

アルカナ・セプテンバー1歳セール

トピックス

・2020年生産地懇談会総括
・研修生募集のお知らせ 2020年軽種馬後継者研修募集案内
・第33回日本ウマ科学会学術集会のお知らせ

種牡馬事業

STALLION NEWS ARCHIVE(スタリオンニュース・アーカイヴ)

地方競馬ニュース

2020年8月・地方競馬場の売り上げ

生産関連ランキング

・2020年9月各種ランキング
・2020年ファーストクロップサイアーランキング掲載

From 競走馬のふるさと案内所・連絡センター

レポート(日高案内所・胆振連絡センター・十勝連絡センター・東北連絡センター・千葉連絡センター・南九州連絡センター)

The First Win
 JBBA 会員生産の初勝利馬一覧(2020.8.15 ~ 2020.9.14)

表紙

・第15回キーンランドカップ(GⅢ)優勝 エイティーンガール
・ヨハネスブルグ(USA)産駒 エイティーンガール紹介
・ひまわり賞(OP)優勝 スクワートルスクワート(USA)産駒 ヨカヨカ
・北海道オータムセール

カラーグラビア

・北海道オータムセール ライブ中継
・JBC2020ポスター
・大井、門別競馬場紹介
・JBIS for Tablet

JAIRSコーナー((公財)ジャパン・スタッドブック・インターナショナルコーナー)etc

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