JBBA NEWS

2020年5月号(VOL.568)

最新の第305便は ウインズ中止 烏森発牧場行き

吉川 良/よしかわ まこと

 「あんなに競馬が好きだったのに、競馬のテレビをつけても、見ているんだかいないんだか、何も反応しないで、ただぼんやりしてるんです。認知症っておそろしい。人間って、こんなふうにもなっちゃうんだって」と電話をしてきた勇さんの奥さんが、「ただね、昨日、三度くらい、ヨシカワ、ヨシカワって、わたしに言うの。ヨシカワが、何、って聞いてみても、ただ黙って、話は続かないんです。すみません、ほんとうに勝手なお願いなんですけど、いちど来ていただけないでしょうか。よく、あの人、ヨシカワさんの話をしていて、何か、思いだしたりしたのかなあって」そう言うのだった。その電話を切ったあと私は、勇さんと仲よしの友治さんにケイタイをかけ、勇さんの妻の和江さんが電話で言ったことを伝えると、「出来たら行ってやってくださいよ。何か、スイッチが入って、頭がまわりだすかもしれないし。ほんとうに人間というのは、いつなんどき、どうなるか分からない。今年の正月だって一緒に飲んで、あのイサム馬券の話なんかしたんですよ。それが2月に脳出血で倒れて、運よく退院できたのに意識が飛んじゃった。(中略)
 この3月、新型コロナウイルスの感染拡大で、競馬は無観客での開催になり、馬券購入は電話、ネットのみとなり、2月29日からウインズは休止が続いている。「ウインズ。場外」と声にしてみるように思い、あちこちのウインズの建物を目に浮かべてみる。するとあらためて、おれの人生って、場外馬券売り場と、深い縁でつながってるなあと考えた。
 その時々の住所や仕事の関係で、私が週末の半日を過ごした場外が変わった。栗田勝騎乗のシンザンが三冠馬になった1964(昭和39)年ごろは水道橋の後楽園、ハイセイコーが人気の1973(昭和48)年ごろは銀座の場外、グリーングラスが菊花賞でテンポイントとトウショウボーイを負かした1976(昭和51)年ごろは、浅草か錦糸町が、いわば「おれの別荘」だった。ほかに京都でバーテンをしていたころの京都場外。それに札幌で暮らしていたころの札幌場外も、いわば「おれの居場所」だったなあ。ラッキールーラがダービーを勝った1977年には鎌倉市に転居していて、それからはウインズ横浜が「おれの庭」になり、それから43年ぐらいが過ぎている。無観客の桜花賞も悲しい。ウインズ休止も悲しい。すべて悲しいと私は思った。

第110回は「孫」 第5コーナー ~競馬余話~

有吉 正徳/ありよし まさのり

 新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、中央競馬は2月29日から無観客で開催を続けてきた。さらに5月31日のダービーまで、この状態を継続することも発表された。無観客が始まって7週目の2020年4月12日、阪神競馬場で第80回桜花賞が行われた。栄冠をつかんだのはデアリングタクト(牝3歳、栗東・杉山晴紀厩舎)だった。最後の直線で1完歩ごとに先行するレシステンシアとの差を詰め、1馬身1/2抜け出したところがゴールだった。それは2頭の祖母の雪辱を果たす鮮やかな勝利だったと筆者。デアリングタクトは父エピファネイア、母デアリングバードという血統の持ち主だ。エピファネイアの母はシーザリオ。デアリングバードの母はデアリングハート。デアリングタクトの「おばあちゃん」であるシーザリオとデアリングハートの2頭はともに2002年生まれ。2005年の桜花賞を一緒に戦った同期だった。結果はシーザリオが2着、デアリングハートが3着だった。勝ったラインクラフトとの差はアタマ、クビというわずかなものだった。惜しくも桜花賞で涙をのんだ2頭が繁殖牝馬になり、力を合わせて送り出したのが孫に当たるデアリングタクトだったのだ。血統ファンならずとも、うなってしまう因縁だろうと筆者。
 不思議な巡り合わせはさらに続く。15年前、祖母2頭の前に立ちはだかったラインクラフトのゼッケンは17番だった。今回、デアリングタクトが最後の最後に捉えたレシステンシアのゼッケンも17番だったのである。しかもデアリングタクトが身にまとっていたゼッケンは祖母デアリングハートと同じ9番だった。こんなおとぎ話のようなドラマがあるだろうか。改めてデアリングタクトの血統表を見てみると、母シーザリオはスペシャルウィークの娘で、スペシャルウィークの父はサンデーサイレンス(USA)だ。母方の祖母デアリングハートはサンデーサイレンスの娘だ。つまりサンデーサイレンスの4×3のインブリードを持つ。近年のJRAのGⅠ馬の血統を調べてみたが、サンデーサイレンスのインブリードを持つ馬は見当たらなかった。デアリングタクトは初めての例になったと筆者。

第122回は 新型コロナウイルスへの危機感 ~中止となったドバイの舞台裏では~
ホソジュンのウマなりトーク

細江 純子/ほそえ じゅんこ

 新型コロナウイルスは終息するどころか、猛威をふるっている様子…。諸外国での死者数は増え続け、入国規制や国境封鎖、外出禁止令の措置をとる国や地域もでてきている状況。また競馬もヨーロッパ、中東、ニュージーランド、オーストラリアの一部やシンガポールと続々と中止となる中、日本は競馬が行われている状況ですが、このコラムが掲載される頃にはどうなっているのでしょうか…?それ以上に、国そのものがどうなっているのか?とにかく不安だと筆者。競馬が行われている舞台裏では、とにかく騎手をはじめとする関係者に感染者を出さないことが使命であり、現場には日に日にピリピリとした空気が流れ、当初の、(なんとしてでも開催を皆で続けていこう)といった一丸で乗り切ろうとする思いを通り越し、区別や状況によっては差別的と思えることもあり、人の心の在り方が残念な方向へと向かっていくことも怖さの1つなのだと感じたと筆者。
 そんな中、苦境だからこそ皆が一丸となって、乗り越えた素晴らしい心温まる出来事があったと筆者。それは中止となったドバイで、現地に残れる担当者の数が6人に限られることとなり、話し合いの末、天に委ねることに決め、関西はジャンケンで、関東はアミダくじで居残り組をそれぞれ3人ずつ決め、と同時に、残ったものは、どの馬も平等に扱うことを肝に銘じるとともに、皆でグループラインを作り、帰国組との連絡を密に取り合いながら調整し、皆がともに一丸となって無事に帰ってくるという奇跡的に思えることを達成したことだったと筆者。レースこそ失ったが、得たものも大きかったと思える功績だと筆者。

第137回は『それはゾンビ映画のように…』北海道馬産地ファイターズ

村本 浩平/むらもと こうへい

 取材の後、その日は交流重賞が行われていたのに気づき、国道沿いにあったAIBAへと馬券を購入するために立ち寄った。だが、いつもなら建物の前に止まっているはずの車の数があまりにも少なく、しかも入り口のシャッターで閉ざされている。まさか今日は休業か、と思っていたところ、入り口の張り紙には、「新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、当面の間、勝馬投票券の発売・払戻を取り止めます」と書かれていた。その時、日常的な行動を、非日常となった世界で取っていた自分に呆れただけなく、その非常識な世界が怖くなったと筆者。2月28日、鈴木直道北海道知事から発令された、緊急事態宣言を聞いた後の自分のFacebookで、「どこか、ゾンビ映画の世界にじんわりと入ってしまったような恐怖感と、未来が見えない絶望感を覚える」と載せた。ゾンビ映画と表現したのは、自分でも書き過ぎかと思ったが、感染(ゾンビ)を防ぐべく、家(ショッピングセンター)に籠城を余儀なくされた今の状況を見ると、あながち間違ってなかったのではとさえ思えると筆者。大変なことになった案件としては、こんな舌っ足らずの人間にも話をいただけるイベント関係の仕事が、「密閉、密集、密接」のいわゆる「三密」の状況を作り出すばかりに、軒並み中止になったことだろうか。それでも競馬が開催されているのは、ファンの一人としても非常に有り難い。日本騎手クラブの会長である武豊騎手が、競馬の様々な存在意義について話した後に語った、「このような状況だからこそ競馬を続け、万全の態勢で困難な状況に立ち向かって乗り越えていかなければいけません」との言葉は、今後も変わらずに競馬を続けて行くという強い意思を伝えていると筆者。

第137回は『無観客競馬2』馬ミシュラン

小山内 完友/おさない ひろとも

 2月27日より始まった「無観客競馬」。当初は現場の取材も変わりなく、今思えば緩い感じだったが、南関東で言えば3月10日から始まった船橋開催は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、事務所への立ち入り禁止、騎手、調教師への囲み取材禁止、移動できるエリア限定と、規制が強化された。実際のところは、カメラマン、フリーの取材記者に対する規制強化で、関地協発行の取材章(通称年パス)を交付されている専門紙、日刊紙の記者はこれまで通りではあったが、通常通りの動きをすると真似する取材者が出てくるかもしれないという懸念と、我々から騎手や厩舎関係者に感染させてはいけないという理由で、取材活動は控えめ、あるいは自粛したと筆者。一応皆プロなので、自粛体制になっても読者にはそうとは悟られないよう、様々なテクニック?を駆使して新聞を作っているのである。とはいえ、騎手や調教師の生の声を聴けないのは寂しい限り。取材規制のなかでも、我々のところまで下りてきてくれる心優しい騎手や調教師がいるので、ここぞとばかりに無観客競馬の印象を聞いた。「お客さんが居ないのは寂しい」と前置きしつつも、皆口を揃えて言うのは、「馬が落ち着いている」ということである。これはパドックを見ても明らかで、2人引きやホライゾネットを着けているような馬も、実に落ち着いて周回している。「無観客競馬は堅い」と言われてきた。どのように比較するかは難しいが、例えば今年のナイター開幕となった4月6日~10日の大井競馬は、全60レースが行われ、1番人気が26勝。2番人気7勝、3番人気8勝。計41レースで1~3番人気の馬が勝っている。昨年はどうだったかというと、同じく2019年4月8日~12日の開催は全60レースが行われ、1番人気が16勝、2番人気16勝、3番人気9勝で計41レース。実は全く同数であるが、1番人気の比較では、より堅い傾向であることは間違いなさそうだと筆者。

海外情報

2020 北米 供用種牡馬 TOP36(種付料順)
2020 北米 初供用種牡馬 TOP16(種付料順)
2020 ヨーロッパ 供用種牡馬 TOP36(種付料順)
2020 ヨーロッパ 初供用種牡馬 TOP17(種付料順)
2019 北米供用種牡馬 初産駒・初種付牝馬 売却価格 TOP10(米欧主要せり平均価格順)
2019 ヨーロッパ供用種牡馬 初産駒・初種付牝馬 売却価格 TOP10(欧米主要せり平均価格順)

2020年供用予定種牡馬

・2020年に全国で供用が予定されている種牡馬290頭を一挙掲載!

トピックス

・2020年度通常総会を終えて (公社)日本軽種馬協会副会長 常務理事 益満 宏行
・中央競馬と地方競馬 交流競走の実績について(2019年) JRA番組企画室
・2020年(第42期)生産育成技術者研修開講
・新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う「北海道市場トレーニングセール開催中止」のご案内
・<北海道市場トレーニングセール せり名簿掲載馬> 販売希望馬 特設WEBサイトのご案内
・競馬学校入試説明会の開催 〜未来のジョッキーを目指せ!~
・日本装削蹄協会 2021(令和3)年度装蹄師認定講習会受講生募集

生産対策関連

・2020年度所管事業の概要紹介 (公社)日本軽種馬協会 生産対策部

種牡馬事業

・STALLION NEWS ARCHIVE(スタリオンニュース アーカイヴ)

地方競馬ニュース

・2020年3月 地方競馬場の売り上げ
・ダービーシリーズ2020 実施概要

生産関連ランキング

・2020年4月各種ランキング

From 競走馬のふるさと案内所・連絡センター

レポート(日高案内所・胆振連絡センター・十勝連絡センター・東北連絡センター・千葉連絡センター・南九州連絡センター)

The First Win
 JBBA 会員生産の初勝利馬一覧(2020.3.22 ~ 2020.4.16)

表紙

・JBBA新種牡馬アニマルキングダム(USA)
・アニマルキングダム(USA)紹介
・2020 JBBA Stallions
・JBBA種牡馬マクフィ(GB)

JAIRSコーナー((公財)ジャパン・スタッドブック・インターナショナルコーナー)etc

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