JBBA NEWS

2020年4月号(VOL.567)

最新の第304便は 古井さん 烏森発牧場行き

吉川 良/よしかわ まこと

 「日本の純文学作家の最高峰の一人で、内向の世代を代表する古井由吉さんが18日、肝細胞がんで死去した。82歳だった。葬儀は近親者のみで営んだ」と新聞で読んだ2月の朝、庭の地面に低く咲いていたクリスマスローズの色をしばらく見つめたあと、仕事部屋の書棚から抜いた古井由吉作品集「明けの赤馬」を机に置き、合掌した。古井さんは競馬が好きだった。雑誌「優駿」に競馬エッセイを連載し、競馬会広報に関わる人たちが集まる東京競馬場と中山競馬場の部屋に、GIレースの日にはやってくる。幸運にもそこに私もいて、長い年月、古井さんといっしょに半日を過ごした。(中略)ふと、私の意識は昔へと向いた。1984(昭和59)年、1年のほとんどを北海道勇払郡早来の吉田牧場で暮らしている。その時、牧草刈りのシーズンに誰とだったか古井さんが現れ、半日近く、倉庫となる厩舎の2階へリフトで牧草の束を運ぶ作業を、古井さんは私といっしょに手伝ったことがあった。あれはいったい、どういうことだったのだろう。牧場の仕事がどういうものか、ちょっとでも体験しようと古井さんが申し出たものだったのか。それは寒い日、吉田牧場の母家のダルマストーヴを囲むようにして、吉田牧場のおばあちゃんのミツさんと古井さんが、とても静かに話を交わしていた場面も私は思いだした。そうそう、ほかにも、編集人の福田喜久男さん、カメラマンの渋谷竜さん、日刊スポーツ記者の横尾一彦さん、それに古井さん、そして私が、牧場主の吉田重雄さんと酒をのんでいた夕方も思いだせる。(略)

第109回は「絆」 第5コーナー ~競馬余話~

有吉 正徳/ありよし まさのり

 2020年3月7日に阪神競馬場で行われた第27回チューリップ賞は、田辺裕信騎手が騎乗したキズナ産駒のマルターズディオサ(牝、美浦・手塚貴久厩舎)が優勝した。種牡馬キズナは現3歳が初年度産駒。最初の重賞勝ち馬となったのはビアンフェ(牡、栗東・中竹和也厩舎)で、19年7月21日に函館競馬場で行われた第51回函館2歳ステークスで藤岡佑介騎手に導かれ、芝1200メートルを逃げ切った。2頭目の重賞勝ち馬はキメラヴェリテ(牡、栗東・中竹和也厩舎)で、19年10月31日に門別競馬場で行われた第46回北海道2歳優駿で福永祐一騎手とコンビを組み、ダート1800メートルを逃げ切ってみせた。20年1月19日、中山競馬場で行われた第60回京成杯でキズナ産駒3頭目の重賞勝ち馬が誕生した。後方から桁違いの末脚を伸ばし、優勝したのはデビュー2戦目のクリスタルブラック(牡、美浦・高橋文雅厩舎)だった。さらに3月20日に中山競馬場であった第34回フラワーカップでもアブレイズ(牝、栗東・池江泰寿厩舎)が勝利した。新種牡馬が桜花賞や皐月賞が始まる前に5頭もの重賞勝ち馬を送り出すのは、あのサンデーサイレンス(USA)も、キズナの父であるディープインパクトもできなかった快挙であると筆者。20年3月15日の時点で、もっとも数多くキズナ産駒に騎乗しているのは武豊騎手だ。父にも、さらに、その父ディープインパクトにも騎乗していた騎手である。のべ34戦し、8勝を挙げている。さすがに相性はいい。期待したいのは武豊騎手によるキズナ産駒でのダービー制覇だ。実現すれば、ディープインパクト→キズナ→キズナ2世という史上初の日本ダービー父子3代制覇という大記録になり、それが同一騎手によって達成されることになると筆者。

第121回は 新型コロナウイルスの競馬界への影響に思う~武豊騎手から発せられるコメントの力~
ホソジュンのウマなりトーク

細江 純子/ほそえ じゅんこ

 競馬も無観客が続き、静けさの中での開催が行われ、景色や歓声の違いはもちろんのこと、3階席のパドックブースに入ると、パドックを周回する馬たちの蹄の音や、隣の部屋のパドック実況も聞こえ、普段とは違う音が耳に入ってくると筆者。騎手によっては、「普段はいれ込む馬がいれ込まず、それもあって勝利できた気がする」との談話もあれば、「普段のパドックの様子と、さほど馬の様子は変わらなかった」と愛馬を曳く担当者の方の意見もあると筆者。馬もそうだが、海外進出が盛んになればなるほど、いかに普段において薬や治療に頼り過ぎずに暮らすかが、いざという時に効果があるとのこと。そのコロナの影響により、ドバイワールドカップは中止に。こういった事態となると毎回思うことの1つが、武豊騎手から発せられるコメントの力。特にそれを感じたのが、雪で開催が中止となった時、「天気だから仕方のないことだけど、調整ルームの窓から、夜や今朝も除雪をする姿を見ていた。その方々のためにも開催したかった」と。だからこそ、武豊騎手のコメントは、中止という事実に深い視点で納得させられますし、寒い中、雪かきをされた方々の気持ちも救われると筆者。

第136回は『ブエノスアイレス午後1時 PARTⅣ』北海道馬産地ファイターズ

村本 浩平/むらもと こうへい

 アルゼンチンを世界的な農業大国にした、肥沃な大地であるパンパ。その大地からのエネルギーが馬の膝丈ほどはあろうかという長さの、牧草の全てに詰まっている。アルゼンチンを代表する名種牡馬オーペンを繋養するHaras Carampangue。牧場の代表を務めるIgnacio Pavlovsky氏は、伸びっぱなしにも思えてくる牧草が生い茂った放牧地を、誇らしげに見渡すと、「この土地はグレードだよ」と呆気にとられている自分と、Hディレクターに話しかけてくる。「主立った栄養は牧草でまかなえるけど、その他の足りない部分を補うために、アルファルファを植えているんだ」と話してくれた。アルゼンチンの逞しさの源となっているのは昼夜放牧による、充分過ぎるほどの運動量とも言える。ある意味では恵まれ、ある意味では過酷でもあるこの環境で育ったアルゼンチンの馬たちは外見だけでなく、内面も強く育っていくのだと筆者。ブエノスアイレスは日差しがさらに激しくなる。

第136回は『無観客競馬』馬ミシュラン

小山内 完友/おさない ひろとも

 2月26日、昼下がりの大井競馬場。フジノウェーブ記念の取材でいつものように競馬場へ来たのだが、どうも事務所内の様子が慌ただしい。知り合いの職員を捕まえて聞くと、どうやら全国の主催者の職員が集まり、何やら会議をしているらしい。前日に政府より「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」が発表されたばかりだから、おおよそ会議の内容は想像がついた。おそらく「中止」か「無観客」かだろうと。第一報は明日から当面の間「無観客競馬」が行われると。「無観客競馬」が行われるのは、戦時中に能力検定競走として行われた1944年以来76年ぶり。当然、現業で携わっている我々全員が初体験の事態だと筆者。2月27日、無観客競馬1日目の大井競馬は、売上11億7,042万3,260円(SPAT4LOTO含む)。本場入場0人。前年の同日に相当する日(19回大井4日目)との比較で109.2%と、物珍しさもあり、まさかの前年超えだった。注目のJRA無観客競馬。2月29日に行われた、中山、阪神、中京の無観客競馬は、前年比12.6%減となる178億4,354万5,100円。2日目の3月1日は、前年比20.1%減の262億2,562万5,800円で、2日間の合計は前年の同時期との比較で91億4,542万6,300円の減収となった。さすがにJRAともなると、1%の重みが違う。これは我々場内で商売している者にとっては衝撃的な数字だ。外販の多い中央版と違い、地方版はほぼ本場、場外での発売であり、ネット版、コンビニプリント版は伸びたものの、紙の部数減を補うには至らず。その中での売上増は、存在意義を問われる重大事件であると筆者。先の見えない中、不安だらけではあるが、とりあえず競馬が行われている分、震災の時よりはまだマシと思って頑張っていると筆者。(次号に続く)

協会会議

・2020(令和2)年度通常総会
・河野会長挨拶(要旨)
・第3回河野洋平賞は廣田光夫氏が受賞
・役員、顧問一覧

トピックス

・JBBA2019年度(第41期)生産育成技術者研修修了式

生産対策関連

・2歳未売却馬実態調査(2018年生産馬)

海外流通促進

・海外競馬で活躍中の日本産馬(市場取引馬)

地方競馬ニュース

・2019年地方競馬開催の概況(1月~12月)
・第21回JBCは金沢競馬場で開催
・2020年2月 地方競馬場の売り上げ
・2020年度ホッカイドウ競馬スタリオンシリーズ競走
・2020年度ホッカイドウ競馬重賞競走日程

生産関連ランキング

・2020年3月各種ランキング

From 競走馬のふるさと案内所・連絡センター

レポート(日高案内所・胆振連絡センター・十勝連絡センター・東北連絡センター・千葉連絡センター・南九州連絡センター)

The First Win
 JBBA 会員生産の初勝利馬一覧(2020.2.16 ~ 2020.3.21)

表紙

・JBBA種牡馬デクラレーションオブウォー(USA)
・2020 JBBA Stallions
・2020千葉サラブレッドセールポスター
・2020 北海道市場ポスター

JAIRSコーナー((公財)ジャパン・スタッドブック・インターナショナルコーナー)etc

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