JBBA NEWS

2019年11月号(VOL.562)

最新の第299便は 元気で 烏森発牧場行き

吉川 良/よしかわ まこと

 テレビのニュース番組を見ていると、たくさんの人が山道をのぼり、山頂の慰霊碑の前で目を閉じ、手を合わせた。死者と行方不明者を63人も出した、長野と岐阜の県境にある標高3,067メートルの、御嶽山の噴火災害から5年。2019年9月27日、死者を悼む登山者を伝えるニュースである。噴火で夫を失った58歳の女性が画面にいて、向けられたマイクに、「先ず、ありがとう、と言いました。わたしたち家族は、あなたがいて、何ひとつ心配しないで暮らしてた。そのことに、お礼を言いました。次に、報告をしました。いろいろと出てくる心配ごとを、家族で、みんなで、ひとつひとつ、どうにかのりこえていますから、安心してくださいって」と語った。「ほかに、どのような?」と取材者の声がする。「ほかに、どのようなって、もうすべてを言ってるじゃないか」と私は少しムカついたのだが、「死んでしまった人に変かもしれませんけど、元気でいてね、と声をかけました」と女性が答えた。私の頭か胸の奥で何かが動いた。おどろいて、自分が、何かの色に染まっていくような気がした。(中略)私の頭に吉田善哉が出てきた。吉田重雄も出てくる。松山吉三郎も出てきた。野平祐二も出てくる。二本柳俊夫も出てきた。全演植も出てくる。みんな、競馬を背負っていた人たちで、おつきあいの縁があったことに私は幸せを感じ、「元気でいてください」と私は心のなかで言っていた。

第104回は「偶然」 第5コーナー ~競馬余話~

有吉 正徳/ありよし まさのり

 記録ずくめのレースになった。2019年10月20日に京都競馬場で行われた第80回菊花賞だ。皐月賞、ダービーに続く3冠レースの最終関門。しかし、そこに皐月賞馬の姿も、ダービー馬の姿もなかった。皐月賞を制したサートゥルナーリアは前哨戦の神戸新聞杯で快勝劇を演じると、矛先を天皇賞へと向けた。ダービー馬ロジャーバローズは8月になって右前脚の浅屈腱炎が見つかり、現役引退が決まった。また前哨戦のセントライト記念で優勝したリオンリオンも直前になって左前脚の浅屈腱炎が判名。同じようなケースを調べてみると1981年の例が見つかった。皐月賞とダービーはカツトップエースが優勝して2冠馬に輝いたが、屈腱炎が見つかり、そのまま現役を引退した。セントライト記念を制したメジロティターンも浅屈腱炎で菊花賞は断念した。神戸新聞杯で優勝したのは牝馬のアグネステスコで菊花賞へは向かわなかった。この年の菊花賞で単勝支持率41.4%という断然の1番人気に支持されたのはサンエイソロン。しかし14番人気のミナガワマンナの快走に阻まれ2着に終わった。今年優勝したワールドプレミアの手綱を取ったのは武豊騎手。2005年のディープインパクト以来、自身の持っていた最多勝を更新する通算5勝目。50歳7ヵ月での菊花賞制覇は史上最年長での優勝、またG1勝利は77勝目で昭和、平成、令和の3時代でのG1制覇という快挙も達成した。ワールドプレミアの父はディープインパクト。今年と似た状況だった1981年に優勝したミナガワマンナはシンザン産駒だった。実績馬不在の年の優勝馬はともに3冠馬を父に持つ競走馬だったのは偶然だと筆者。

第116回は「藤田菜七子騎手を見守り支える師匠、兄弟子の存在 ~一方で早い引退を決意する若手騎手も~」
ホソジュンのウマなりトーク

細江 純子/ほそえ じゅんこ

 10月の競馬学校騎手課程生徒の模擬レースの日は、一般公開に集まったお客様に騎手課程生徒たちがどのような訓練を受けているのか説明したり、模擬レース終了後のトークショーの司会をしている筆者。今年は4名の生徒が来年のデビュー予定を目指しており、そこに現役騎手の丹内騎手、丸山騎手、野中騎手が参戦する形で、2レースが行われた。根本厩舎所属の3人が揃うことになっていたが、直前に門別競馬場での騎乗が決まり、藤田騎手は不参加。話は東京盃での重賞制覇のことに。根本厩舎の大仲では、コパノキッキングでの乗り方について、菜七子ちゃんが、丸山騎手に、「どうやって乗ったらいいですかね?」と相談していたとのこと。そこで丸山騎手は、「内枠だけど、控えても能力が抜けてるから、大丈夫。差しきれる。とアドバイスしたら、ナナコも、そうですよねと言っていたのに、レース見たら逃げてた」と、先輩のアドバイスを無視したかのような内容に、その場は爆笑。またもう1人の兄弟子である野中騎手は、「僕には相談がありませんでした」と更に笑いを誘った。そして根本調教師は、「ナナコに見つからないように、そっと大井競馬場で観戦していたんだけど…」と。その会話に、今のナナコちゃんの活躍は、彼女自身の努力はもちろんですが、素晴らしい師匠と兄弟子たちの存在も大きな要因なのだと筆者。その一方で、対照的とも言える形で騎手の幕を閉じたのが関西の義英真騎手。2014年デビュー、騎手生活は6年弱。まだ24歳という年齢を考えると、本人の資質だけの問題と片付けてしまうことはできないのではと筆者。

第131回は『馬の鬣』北海道馬産地ファイターズ

村本 浩平/むらもと こうへい

 こんな卑劣なことをする奴は、競馬ファンだと名乗って欲しくない。事の発端は、ヴェルサイユファーム(株)で功労馬として繋養されていた、タイキシャトル(USA)とローズキングダムの鬣が、何者かによって切り取られたことだった。その後も㈲日西牧場ではビワハヤヒデが、AERUでもウイニングチケットが同様の被害に遭っていたことが判明した。ヴェルサイユファーム(株)とAERUでは、この後に当面の見学中止を発表。㈲日西牧場では年齢面も考慮する形で、今後は一切の見学を中止することになった。3つの牧場に共通しているのは、ファンにいつ来てもらってもいいように、見学時間が長く、見学時間にスタッフが常駐していないことだと筆者。ふるさと案内所の女性スタッフから、「二人で犯行に及んだという可能性はありませんか?」と言われてハッとした。確かに一人が牧柵越しに馬を呼び寄せて、顔の前で馬を固定。もう一人が犯行に及んだとなれば、容易に鬣は切り取れるような気もしてくる。この事件は、ひょっとしたら「愉快犯」のようなものなのでは?という気もしてくる。いずれにせよ、次に被害に遭う馬が出てこないことと、早急に犯人が逮捕されることを心から願うと筆者。

第131回は『熱しやすく冷めやすい』馬ミシュラン

小山内 完友/おさない ひろとも

 秋のG1シーズン突入である。毎年恒例の楽しくもあり、(金銭的に)苦しくもある、3か月間の始まりである。昨年は台風24号の影響で、スプリンターズSは本場入場2万4,336人(前年比65.1%)と大きく減らし、売上も126億850万3,700円(前年比100.8%)と横ばいだったが、今年は本場入場3万4,347人(前年比141.1%)、売上も130億2,513万100円で前年比103.3%アップとまずまずのスタートとなった。
 しかし、第2弾の秋華賞は、猛烈な勢力を持ち、各地に災害をもたらした台風19号の影響により、土日の東京競馬が中止に、それぞれ週明けの火曜日と翌週の月曜日にスライド、代替競馬となり、関東地区での場外発売も出来なかった影響が大きかった。本場入場3万5,344人(前年比79.3%)、売上117億4,924万5,600円(前年比78.6%)と大幅ダウン。奇しくも2週続けて開催日が増えた菊花賞週。本場入場は5万5,452人(前年比100.7%)、売上162億9,025万3,800円(前年比88.3%)と大きくダウンした。予兆はあった、ラグビーワールドカップ。なにせ熱しやすい国民性。「ラグビー、ラグビー」と騒いでいる。移り気な競馬ファンが、この期間だけあっちへ行っても不思議ではない。今年の菊花賞は前日には日本シリーズが始まり、当日の夜には決勝トーナメントの日本-南アフリカ戦という、イベントを行う上での周辺環境としては、あまりいい条件とは言えなかったのかもしれない。そして来年は東京オリンピックが開催される。ここにきてマラソンと競歩の札幌開催が通告されたり先行き不透明。とりあえず来た球を打つしかないのだがと筆者。

協会会議

・2019年度 第4回・第5回理事会
・2019年度 JBBA/JRA第1回生産等に関する協議会

せり市場成績

・北海道オータムセール サラ1歳

繁殖牝馬セール成績

・ジェイエス繁殖馬セール
・ノーザンファーム繁殖牝馬セール

海外ステークスウイナーズ

ジャンリュクラガルデール賞 1人気Victor Ludorum3連勝で父産駒今季3頭目の2歳G1馬
デューハーストS 1人気Pinatubo6戦全勝、 G1 連勝で英2冠1人気
クリテリヨムドサンクルー 3人気Mkfancy 先行圧勝で父産駒5頭目のG1馬
フィリーズマイル 1人気Quadrilateral G初挑戦でG勝馬退けデビュー3連勝、英牝馬2冠1人気
マルセルブサック賞 3人気Albigna愛モイグレアスタッドSG12人気6着から巻返し
チヴァリーパークS 欧豪チャンピオンスプリンター Starspangledbanner産駒 愛調教Millisle6人気の低評価覆す
凱旋門賞 前年4着4人気Waldgeist4度目の対戦で 1人気 Enable( 過去2年勝馬) 破り G1 4勝目( 2,4,5歳時)
オペラ賞 前走ヴェルメイユ賞 G1 4着7人気 Villa Marina G1 初制覇
フォレ賞 2人気 One Master 連覇、 1,2,4代母は英 G 勝馬
クイーンエリザベス二世S 英2000ギニー2着6人気King of Change父産駒2世代目から初の G1 馬
コールフィールドギニーズ 春メルボルン3歳戦のハイライト、3人気Super Seth前哨戦上位馬破り初 G 制覇
ゴールデンローズS 3歳春シドニーの大一番、1人気Bivouacトライアル G2 から連勝

海外セール成績

タタソールズ・オクトーバー1歳セール・ブック1(セレクトセッション)

トピックス

・JRAからのお知らせ JRA施設内で競走馬に与える飼料の管理体制の強化について
・2019秋 北海道馬産地見学ガイドツアー レポート
・刊行物紹介 田端到・加藤栄の種牡馬事典 2019-20
・読者プレゼント 2020ホースマンカレンダー
         田端到・加藤栄の種牡馬事典 2019-20
         競走馬のふるさと案内所オリジナルフェイスタオル・クリアファイル

種牡馬事業

・種牡馬配合、種付規程の一部改正について
・2020年種付分種付条件について
・STALLION NEWS ARCHIVE(スタリオンニュース・アーカイヴ)

海外流通促進

・2019年北海道市場セレクション、サマー、セプテンバー、オータムセール海外購買者購買状況
・海外競馬で活躍中の日本産馬(市場取引馬)

地方競馬ニュース

2019年9月・地方競馬場の売り上げ

生産関連ランキング

・2019年9月各種ランキング
・2019年ファーストクロップサイアーズランキング掲載

From 競走馬のふるさと案内所・連絡センター

レポート(日高案内所・胆振連絡センター・十勝連絡センター・東北連絡センター・千葉連絡センター・南九州連絡センター)

The First Win
 JBBA 会員生産の初勝利馬一覧(2019.9.10 ~ 2019.10.7)

表紙

・JBBA新種牡馬アニマルキングダム(USA)
・アニマルキングダム(USA)紹介
・アニマルキングダム(USA)5代血統表
・2020年JBBAサラブレッド種牡馬配置表

カラーグラビア

・JBBA種牡馬バゴ(FR)産駒 クロノジェネシス
・第24回秋華賞(G3)優勝 クロノジェネシス

JAIRSコーナー((公財)ジャパン・スタッドブック・インターナショナルコーナー)etc

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