JBBA NEWS
2019年6月号(VOL.557)
最新の第294便は ひとりじゃない 烏森発牧場行き
吉川 良/よしかわ まこと
5月5日の夜、「明日、遊びに行ってもいいですか。うれしい報告があるんです」と幸市が電話してきた。「ひょっとして、女性といっしょ?」「だといいですけど、ちがいます。でも、ぼくには、電話で言うのはもったいないくらい、うれしいことです。ひとりじゃない事件」「わかった。明日を待つよ」と私が言った。西沢幸市、26歳。横浜市戸塚の自動車修理工場で働いている。2歳のときに父親が失踪、8歳のときに母親が病死し、横浜の養護施設で育った。その養護施設に、ときどき遊びに行っていた私と知りあい、18歳で自動車修理工場に就職したときも家に招いて乾杯をした。(中略) まさしくぼくは、「ひとりっきりで生きているという感覚のかたまりなのですが、それがケイデンスコールという一頭の馬のたたかいが目にやきつき、自分はひとりっきりではないぞという、不思議な安心感のようなものが生まれたのです。何度も書いてしまいますが、不思議です」という手紙を私は、電話で幸市が「ひとりじゃない事件」と言ったのを思いだしながら読みなおした。5月6日の夕方、ウイスキーのボトルをみやげにして幸市が現れ、ボトルといっしょに、一枚の馬券をテーブルに置いた。NHKマイルCの馬単17-18と18-17を500円ずつ買った馬券で、1着アドマイヤマーズ、2着がケイデンスコールの馬単17-18が的中しているのだ。配当が2万2,440円である。「ぼくに不思議な感覚を恵んでくれたケイデンスコールは買おうと、はじめから決めてました。」(略)
第99回は「レーン」 第5コーナー ~競馬余話~
有吉 正徳/ありよし まさのり
オーストラリアから初めて来日したダミアン・レーン騎手の活躍は衝撃的だった。4月28日来日二日目の騎乗となった東京競馬第5レースの3歳未勝利戦で2番人気のグルファクシーに騎乗して21/2馬身差の勝利を飾ると、第7レースからブレイブメジャー(1番人気)、ラボーナ(2番人気)、エストスペリオル(2番人気)と3連勝の荒稼ぎだ。手がつけられないとはこのことだ。3日間開催の3日目は新潟競馬場に遠征。メインのG3新潟大賞典では7番人気のメールドグラースを優勝に導き、中央競馬騎乗3日目、14戦目で重賞勝ちを収めてしまった。5月11日の東京競馬場では8戦4勝の大活躍で、メインのG2京王杯スプリングCでは1番人気のタワーオブロンドンに騎乗して優勝。芝1400メートルで1分19秒4というコース新記録を更新した。翌日も3勝を上乗せしたが、ハイライトはG1ヴィクトリアマイルだ。騎乗したのは5番人気のノームコア(牝4歳、美浦・萩原清厩舎)。初めてコンビを組んだハービンジャー(GB)産駒を鮮やかにエスコートし、最後はクビ差の競り合いを制して優勝した。勝ち時計は芝1600メートルで1分30秒5という中央競馬新記録だ。なんと前日の京王杯スプリングCに続く2日連続のレコード勝ちだ。
直前の乗り代わりでダービーを制した最後の例は1985年のシリウスシンボリ(岡部幸雄騎手→加藤和宏騎手)だが、加藤騎手はそれ以前にシリウスシンボリの手綱を取ったことがあった。いわゆる「テン乗り」、まったくの初顔合わせでダービーを勝った例は85回の歴史でたった3度しかない。最後の例は1954年のゴールデンウエーブの岩下密政騎手までさかのぼる。レーン騎手とサートゥルナーリアの結果はいかにと筆者。
第111回は「8年ぶりのアイルランド ~国民性とジョゼフ・オブライアン師から気づかされたこと~」
ホソジュンのウマなりトーク
細江 純子/ほそえ じゅんこ
先日、8年振りにアイルランドへ行ってきた筆者。騎手引退後、競馬を伝える側となり、様々な取材をする中で、やはり人馬の歴史が深い地でもあり筆者の尊敬するエイダン・オブライアン夫妻を身近で見たいとの思いから、アイルランドへ。その時に何を1番に感じたかというと、人と馬との距離の近さ。具体的に言うと、人が馬の気持ちになって物事を考えること、図ることができ、馬という生き物そのものを深く理解している点で、基本は「シンプル」であることだと筆者。今回アイルランドを訪ねて、1点、日本と海外との違いを顕著に感じ、子を持つ母として勉強になることがあったと筆者。それは、良い意味でも悪い意味でも、日本の過剰サービスとも言える、いわゆる、「オモテナシ」精神。やはり自分で考え、選択をし、行動ができる人間にならないと、最終的に困ってしまうのは本人なのだと、実感したと筆者。
ジョセフ・オブライアン厩舎ではジョセフと共に調教を見学、競走馬として歩んでいく過程における育て方の理論は、一頭一頭違うポテンシャルやキャラクターをどう育てていくか?非常に子育てと通ずるものがあり、そこにおける様々な采配こそが調教師としての最大の仕事と考えているようだったと筆者。
第126回は『ホース・スピーク PART II』北海道馬産地ファイターズ
村本 浩平/むらもと こうへい
今年の2歳馬取材からは「耳立て」ではなく、「耳向け」との気持ちを持ちながら、馬の斜め前へと立ってきた。では「耳立て」と「耳向け」との違いだが、個人的な感想としては、人が恣意的に馬の顔や耳を向けさせるのが「耳立て」。馬との意思疎通を図りながら、馬が自ら顔や耳の位置を決めてくれるのが「耳向け」だと思うと筆者。実際に立ち写真の現場では「耳向け」ではなく、「耳立て」が行われている現状も理解しているが、ホースメッセのグランドワーク講座で、ホースクリニシャンの宮田朋典氏が行っていた馬とのコミュニケーションの取り方や、「ホース・スピーク」を監訳した宮地美也子さんとの意見交換を通して、実践してみたい行動があったと筆者。実際にその行動を立ち写真の撮影に出てきた馬に試してみると、見るからに大人しい馬だけでなく、立ち止まるのも難しいような馬でも、同じような対応をこちらに向けてくれたときには感動したと筆者。まだまだ「耳向け」の道は長い。機会があれば「耳向け」を意識しながら、馬の斜め前に立ち続けていきたいと筆者。
第126回は『ぶっつけ本番』馬ミシュラン
小山内 完友/おさない ひろとも
4月24日、大井競馬場で南関東牡馬クラシック第1冠の第64回羽田盃が行われ、1番人気のミューチャリーが中団から後ろ目の10番手から1頭だけ次元の違う末脚(上り36秒9。第2位は38秒5)で羽田盃を制した。「直線に向けば脚を使うので、進路だけを考えていたが、こんなに差を付けているとは思わなかったです」と御神本騎手。「以前羽田盃を勝った2頭はダービーを勝てなかったから、今度こそ」と矢野義幸調教師。
ミューチャリーの前走は今年新設された第1回雲取賞。2月7日以来、中75日の間隔があった。最近10年の羽田盃勝ち馬の前走は、京浜盃が8頭と圧倒的(5頭が勝ち馬、2着2頭、11着1頭)で、それ以外の前走は4月17日のチューリップ特別から臨んだ2012年のアートサハラと、2月19日のヒヤシンスステークスから転入初戦で臨んだ2017年のキャプテンキングの2頭。キャプテンキングは中49日だから、これを大きく更新した予定通りの「ぶっつけ本番」であった。
おりしも、今年の天皇賞(春)フィエールマン、皐月賞サートゥルナーリアが「ぶっつけ本番」で制した。過去3歳初戦が皐月賞だった馬は8頭いて、2017年5着のレイデオロが最高。使う側の「進化」に、観る側の「常識」が付いていけてない感じがすると筆者。
せり市場成績
・北海道トレーニングセール サラ2歳
・千葉サラブレッドセール 2歳トレーニングセール サラ2歳
海外ステークスウイナーズ
ケンタッキーダービー | 1位入線2人気 Maximum Security (父 New Year’s Day は Street Cry 産駒)走行妨害で17着降着。18 人気 Country House 繰り上り |
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英2000 ギニー | 今季初戦2人気 Magna Grecia 父に初の英クラシック勝ち贈る |
プールデッセデプーラン | 欧年度代表馬 Kingman 初産駒1人気 Persian Kingデビュー2戦目から5連勝 |
ケンタッキーオークス | フォーティナイナー系 Alternation 2世代産駒6人気Serengeti Empress 外枠から逃げ切る |
英1000 ギニー | 7人気 Hermosa 先行押切り、父産駒3勝目。 Galileo x Pivotal 5頭目の G1 馬 |
プールデッセデプーリッシュ | 今季デビュー前哨戦勝馬 Castle Lady 1人気に応え無敗守る。父産駒初の欧牝クラシック勝馬 |
トピックス
・公益社団法人日本軽種馬協会 木村貢副会長理事 農林水産大臣賞を受賞
・2019年度生産関連統計 2019年度種牡馬種付料階層別頭数
・日本装削蹄協会 2020(令和2)年度装蹄師認定講習会受講生募集
・未来のジョッキーを目指せ!「2020(令和2)年度 騎手課程生徒」募集!
生産対策関連
・軽種馬の生産費(2017年実績)
海外流通促進
・2019年北海道トレーニングセール 海外顧客購買活動
・海外競馬で活躍中の日本産馬(市場取引馬)
種牡馬事業
・STALLION NEWS ARCHIVE(スタリオンニュース・アーカイヴ)
地方競馬ニュース
・2019年4月・地方競馬場の売り上げ
・地方競馬所属別在籍頭数/サラ系統(2019年4月1日現在)
・地方競馬開催日程 2019年【7月〜9月】
生産関連ランキング
・2019年5月各種ランキング
From 競走馬のふるさと案内所・連絡センター
レポート(日高案内所・胆振連絡センター・十勝連絡センター・東北連絡センター・千葉連絡センター・南九州連絡センター)
The First Win
JBBA 会員生産の初勝利馬一覧(2019.4.16 ~ 2019.5.10)
カラーグラビア
・live.jbis.or.jp
・JBIS for Tablet
表紙
・第86回日本ダービー優勝 ロジャーバローズ
・ロジャーバローズ紹介
・BOKUJOB関西フェア2018
・八戸市場ポスター
JAIRSコーナー((公財)ジャパン・スタッドブック・インターナショナルコーナー)etc
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