JBBA NEWS

2018年11月号(VOL.550)

最新の第287便は 競馬学者 烏森発牧場行き

吉川 良/よしかわ まこと

 「この一年、こんなに自分が親父のことを考えるなんて思わなかったなあ。なんだか親父の悲しさとか寂しさみたいなものが、死んでから見えてきたような気がするんですよ。明日、会食のとき、ひとこと、親父のことを話してもらえませんか。お願いします」と9月28日、金曜日の晩、川崎に住む昌平さんが電話してきた。明日、鶴見の寺で、イダさんの一年忌がある。昌平さんはイダさんのひとり息子で50歳。横浜の倉庫会社勤務だ。イダさんと私は、ウインズ横浜に近い居酒屋での仲間。そんなに深いつきあいではなかったが、三十年ぐらいは馬券売り場で会話していた。(中略)2017年10月3日、イダさんは78歳で人生を閉じた。「おい、大事なのは馬券じゃなくて貯金だぞ」というのが、「半年におよぶ入院中での父親の冗談ベストワンだと、通夜で昌平さんが私にだけ言った。2018年9月29日、イダさんの遺影の前に15人ほどが集まった。「わたしの兄は大学で教える物理学者で、弟も大学で教える数学者で、頭の悪い自分は左官職人。劣等感から抜けきれない一生だなあ。で、何十年も休みの日には、馬券売り場に逃げ込んでいたの、と居酒屋でイダさんが言いました。何言ってるんだ、イダさんは、シンザン記念で27.4倍のキョウヘイの単勝を当てた競馬学者じゃないかと私が言うと、うれしそうに笑い、人気のないキョウヘイの単勝を買ったのは、息子の名前に似てたからと、テレていました」というのが私の献杯の辞だった。(略)

第92回は「アイ」 第5コーナー ~競馬余話~

有吉 正徳/ありよし まさのり

 10月14日に京都競馬場であった第23回秋華賞は断然の1番人気に支持されたアーモンドアイ(牝3歳、美浦・国枝栄厩舎)が優勝した。桜花賞、オークスに続く優勝で史上5頭目の牝馬3冠に輝いた。かつて牝馬3冠の最終戦はビクトリアカップだった。1970年に創設され、京都競馬場の芝2400メートルを舞台とした。1975年にエリザベス女王が来日したのを記念して、翌1976年からレース名がエリザベス女王杯へと変わったが、条件は同じく京都競馬場の芝2400メートルだった。ビクトリアカップの時代、3冠牝馬は誕生せず、エリザベス女王杯の時代の1986年にメジロラモーヌ(父モガミ(FR)、母メジロヒリュウ)が桜花賞、オークス、エリザベス女王杯の3冠を制したと筆者。2003年のスティルインラブ(父サンデーサイレンス(USA)、母ブラダマンテ(USA)、2010年のアパパネ(父キングカメハメハ、母ソルティビッド(USA))、2012年のジェンティルドンナ(父ディープインパクト、母ドナブリーニ(GB))とそれぞれ個性豊かな3冠馬ばかりだが、アーモンドアイ(父ロードカナロア、母フサイチパンドラ)は、これまでの4頭とは違う記録をいくつか作ったと筆者。一番の特徴はその勝ちっぷりで、3冠レースすべてで2着に1馬身半以上の差をつけたのは初めて。もう一つの特徴はキャリアが少ないことで、3冠馬になったにもかかわらず、キャリアは6戦。十分にレース間隔をあけて走ることがアーモンドアイにとっては最善なのかもしれないと筆者。

第104回は「海外の競馬が身近に ~そこから感じる調教師の本質~」
ホソジュンのウマなりトーク

細江 純子/ほそえ じゅんこ

 早11月、2018年も残すところ、時の流れの速さが年々増していくように思えるのは、日本で行われる毎週末の競馬に加え、海外馬券や、海外競馬を目にする機会が増えたことも、その要因の1つではないかと筆者。その中でも毎年1番の注目となるのが、10月の凱旋門賞で、今年何よりも印象的だったのが、合田直弘さんが現地から伝えたゴスデン調教師の観戦の様子。レース中の立ち振る舞いについて、声を荒げるどころか、言葉を発することもなく、静かにレースを見、ゴール後は、小さく頷かれたとのこと。その発せられる言葉の1つ1つが、どれも深い眼差しと観点を持ち、馬自身の目線で見ていると感じられるコメントばかり。同じく牝馬で2連覇を成し遂げた際のトレヴの女性調教師ヘッド氏も、ジャルネ騎手の騎乗に対する馬への負担度の大きさを1度目は指摘し、2度目においては、トレヴを1番理解している騎手が最高の騎乗をしたと称賛した。勝つことに結果の全てがあるのではなく、1つの走りが、その後の馬に与える影響度の違いを感じての発言。海外競馬がより身近になったことで、こういった調教師の姿や発言を知る度に、調教師という職種への憧れや、本質を感じさせられると筆者。

第119回は『胆振東部地震』北海道馬産地ファイターズ

村本 浩平/むらもと こうへい

 9月6日の未明に発生した胆振東部地震では、まさか自分が「被災者」になるとは思わなかったが、約1日のブラックアウト(大規模停電)を経験しただけの自分は、改めて思うと「被災者」では無かったのかもしれないと筆者。
 胆振東部地震は、多くの人命や、そこに住む人々の生活の基盤を奪っただけでなく、馬産地にも様々な影響を及ぼした。震源地に近い安平町の牧場では建物の被害だけでなく、放牧地や場内の道路の地割れも見つかり、10月上旬の時点でも、まだ完全復旧に至ってない牧場もある。最も大きな被害と言えたのは、ライフラインの復旧の遅れだった。今回の地震で誰もが想像し得なかったのが、ブラックアウトであろうと筆者。道内で最大となる電気を供給していた苫東厚真発電所が、地震の影響で停止。供給バランスの乱れに端を発したことで、まさにドミノ式に全道が闇に包まれたが、供給量が震災前に近い水準まで戻った時ですら、鉄塔や電柱の倒壊が要因となり、復旧に時間を要した場所も多かった。今回の地震による被害に際し、多くの牧場関係者から被害についての話を聞くに当たり、改めて気付かされことが水の重要性だったと筆者。

第119回は『消費税増税』馬ミシュラン

小山内 完友/おさない ひろとも

 消費税10%への引き上げが、いよいよ来年10月に行われるらしい。今年と同じ日程と仮定すれば、せりならオータムセールから、新聞なら毎日王冠や京都大賞典の開催あたりから10%になるはず。もっとも馬や新聞だけでなく、あらゆるモノやサービスに課せられるだけに、その影響は軽視できない。競馬専門紙は「生モノ」なので買いだめするわけにもいかないから、9月はまず上がらないだろうし、10月に落ち込むかどうかも(予想屋なのに)予想出来ないと筆者。新聞は消費税軽減税率が採用されるというが、我が社には適用されないし、されようもなく、消費税分だけ新聞の税込代金が上がることになる(はず)。と筆者。ここにきて、現金を使わないキャッシュレス決済を利用した際に2%還元することを検討しているというニュースがある。あらかじめ入金する「プリペイド」(前払い)、デビットカードやQRコードなどで預金口座から直接引き落とす「リアルタイムペイ」(即時払い)、クレジットカードに代表される「ポストペイ」(後払い)が主に該当するものらしい。 この分野は次々と新たな決済方法が現れるので、追いかけるように対応する必要があるのだが、この手のものに敏感な若手には「ウチは遅れてますよね」と言われ、上層部は諸々に難色を示し、これに挟まれた中間管理職は非常に切ないと筆者。良く言えば伸びしろがまだある、悪く言えば旧態依然としているのが現状だと筆者。

協会会議

・2018年度 第5回・第6回理事会
・2018年度 JBBA/JRA第1回生産等に関する協議会

せり市場成績

・北海道オータムセール サラ1歳
・セレクトセール サラ1歳 再掲

繁殖牝馬セール成績

ジェイエス繁殖馬セール

海外ステークスウイナーズ

デューハーストS 1人気 Too Darn Hot デビュー4連勝で英2000ギニー・ダービー前売1人気、祖母は仏ダービー馬 Darshaan の半妹
ミドルパークS ヨハネスブルグ系 No Nay Never 初年度産駒1人気 Ten Sovereigns デビュー3連勝
ジャンリュクラガルデール賞 3人気英調教 Royal Marine 先行抜出、祖母の兄弟にヒシアケボノ、アグネスワールド
チヴァリーパークS 2人気 Fairyland ヨーク G2 から連勝
フィリーズマイル 6人気 Iridessa が1人気 Hermosa(Hydrangea-英BCF&MS G1 の全妹)抑え父(2歳新種牡馬)に初G勝ち贈る
マルセルブサック賞 7人気 Lily‘s Candleの外差し決まる 前夜のアルカナ ARC Sale(現役馬、サンクルー競馬場)で取引
英チャンピオンS 1人気4牡Cracksman連覇、硬い馬場嫌いRアスコット以来も6馬身差圧勝
クイーンエリザベス二世S 1人気3牡 Roaring Lion エクリプスSからG1 4連勝
英BCフィリーズ&メアズS 2人気 Magical 初 G1 勝ち、前年に続き Galileo x Pivotal
凱旋門賞 1人気 Enable 連覇(英調教初の2勝馬)、牝馬の優勝は近8年7回目
オペラ賞 1人気英調教Wild Illusion英ナッソーSから G1 連勝
コールフィールドギニーズ 2歳 G1 勝ち1人気The Autumn SunシドニーのゴールデンローズSからG1連勝

海外セール成績

タタソールズ・オクトーバー1歳セール・ブック1(セレクトセッション)

トピックス

・生産育成技術者研修 2018年牧場説明会のお知らせ
・2018年第40期生産育成技術者研修 進捗状況
・JRAからのお知らせ 国際競走のための一時輸入衛生条件の運用変更について
・JBBAからのお知らせ 国際交流競走出走馬が帰国せず繁殖登録が可能に
・2018秋 北海道馬産地見学ガイドツアーレポート
・刊行物紹介 田端到・加藤栄の種牡馬事典 2018-19
・読者プレゼント 2019ホースマンカレンダー 田端到・加藤栄の種牡馬事典 2018-19
・公益社団法人日本装削蹄協会からのお知らせ 2019年度の装蹄師認定講習会講習生募集

種牡馬事業

・種牡馬配合、種付規程の一部改正について
・2019年種付分種付条件について

海外流通促進

・2018年北海道市場サマープレミアムセール、サマーセール、オータムセール海外購買者購買状況
・海外競馬で活躍中の日本産馬(市場取引馬)

地方競馬ニュース

2018年9月・地方競馬場の売り上げ

生産関連ランキング

・2018年10月各種ランキング
・注目の2018年ファーストクロップサイアーズランキング掲載

From 競走馬のふるさと案内所・連絡センター

レポート(日高案内所・胆振連絡センター・十勝連絡センター・東北連絡センター・千葉連絡センター・南九州連絡センター)

The First Win
 JBBA 会員生産の初勝利馬一覧(2018.9.18 ~ 10.19)

表紙

・JBBA新種牡馬デクラレーションオブウォー(USA)
・デクラレーションオブウォー(USA)紹介
・デクラレーションオブウォー(USA)5代血統表
・2019 JBBAサラブレッド種牡馬配置表

JAIRSコーナー((公財)ジャパン・スタッドブック・インターナショナルコーナー)etc

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