JBBA NEWS

2016年10月号(VOL.525)

最新の第262便は ありがとう 烏森発牧場行き

吉川 良/よしかわ まこと

2年前の夏の日の夕方のこと、鎌倉市大船の大型スーパーマーケットに隣接する回転寿し店で、テーブル席にいた時枝さんと目が合って私は面食らった。時枝さんといっしょにマスダさんがいたからである。大船の町はずれに、私の長女の友だちのメグさんが営む小さなバーがあり、もう10年になるだろうか、ふた月に一度くらい、私は客になる。そこで何度か、常連客の時枝さんと会っているのだ。時枝さんは横浜にある大きな病院のベテラン看護師だ。(中略)去年7月、マスダさんが死んだ。七十四歳だった。メグさんから電話が来て通夜へ行き、マスダさんは深夜に心筋梗塞に襲われ、不運にも同居していた時枝さんは仕事で夜勤、孫たちはキャンプへ行っていて不在だったのを知った。「亡くなる前の日にはいていたズボンのポケットに入っていたんですって」とメグさんが、時枝さんから渡されたという馬券を私に見せた。馬券は3枚あって、七夕賞のグランデッツアの単勝、プロキオンSのベストウォーリアの単勝、マリーンSのソロルの単勝を各500円買っている。調べてみるとマスダさんは2015年7月12日、福島と中京と函館のメーンレースの単勝を、すべて的中させていたのだ。さらに調べてみるとグランデッツアが4.5倍、ベストウォーリアが6.7倍、ソロルが6.3倍だった。マスダさんは酒をのまないので、7月12日、ウインズからコーヒーショップに行き、コーヒーをのみながら単勝の三つの的中に乾杯をし、大船の家に帰って、そうしてひとりで静かに夜を過ごし、三つのメーンの単勝を当てたのはうれしいと眠りにつき、人生にさようならをしたのだなと私は勝手に思った。(略)

第67回は「ラニ」 第5コーナー ~競馬余話~

有吉 正徳/ありよし まさのり

今年の日本ダービー馬マカヒキ(牡3歳、栗東・友道康夫厩舎)がフランス・シャンティイ競馬場で行われたニエル賞(GⅡ、芝2400㍍)に出走し、見事に優勝した。中央競馬初の海外遠征に挑んだハクチカラを皮切りに、日本ダービー馬はマカヒキまで13頭が海外遠征している。このうちハクチカラ、オルフェーヴル、キズナ、そして今回のマカヒキと4頭が勝ち星を挙げているが、まだGⅠレースでの勝利はない。マカヒキの出走する凱旋門賞で日本にいながら馬券が買えるようになる。今年の競馬界の最大のニュースだと筆者。今年は例年以上に日本馬が海外で活躍、先陣を切ったのはラニ(USA)(牡3歳、栗東・松永幹夫厩舎)で、3月26日にドバイのメイダン競馬場であったUAEダービー(GⅡ)で、日本調教馬として初優勝を果たした。ラニはこの後、米国に転戦。ケンタッキー・ダービー9着、プリークネスS5着、ベルモントS3着と3冠レースを完走した。日本調教馬が米国3冠レースをすべて走りきったのはラニが初めてだった。この後JRAは米チャーチルダウンズ社との提携でケンタッキー・ダービーに出走するためのポイントを日本国内で取得できる契約を結んだ。対象レースは2歳11月のカトレア賞と3歳2月ごろのヒヤシンスS。4着までに入れば、ケンタッキー・ダービーに出走するためのポイントを与えられる。いずれもラニが出走したレースだ。この提携で世界への道はさらに広がったと筆者。

第79回は「次に繋げる仕上げ・競走・コメントとは ~考える物差しが広がる~」
ホソジュンのウマなりトーク

細江 純子/ほそえ じゅんこ

初めてシャンティイ競馬場で行われる凱旋門賞は、国内初となる海外馬券発売という記念すべきレース。マカヒキとJRA所属のルメール騎手のコンビは、前哨戦においてスローな流れの中の密集した馬群でもストレスを感じずに走れるかという課題をクリアし、万全の態勢で本番につなげていると筆者。最近はGⅠ馬が前哨戦に出走する際、「あくまでも前哨戦ですから、本番に繋がる形で」とのコメントも増えてきていると筆者。馬は機械ではなく生き物。一戦が与える体への影響、心への影響は想像する以上に大きなものがあり、実績のある有力馬に騎乗する騎手心理も複雑なものがある。その点をどこまで理解するかが重要と筆者は言う。凱旋門賞2連覇を成し遂げたトレヴの女性調教師・ヘッド師の言葉。大外から一気にスパートして勝った初制覇の時は、「勝つには勝ったけど、決して褒められる騎乗ではなかった」と、インから抜け出した連覇の際には、「鞍上が素晴しい騎乗だった」とジャルネ騎手を賞賛。同じ勝利でも、その内容に重きを置くのは、勝利という事実よりも、レースにおける疲労度など、その後の馬の状態を考えての証なのではと筆者。

第94回は『台風』 北海道馬産地ファイターズ

村本 浩平/むらもと こうへい

8月22日の午後0時に千葉県に上陸した台風9号は、雨による被害を各地にもたらした後、23日の午前6時頃に北海道の日高地方へ再上陸。その日の朝のテレビのニュースをみた自分の目に飛び込んできたのは、眠気もいっぺんに覚めるような被害の映像だった。Facebookでも新ひだか町静内の中心部が冠水した写真や、その後も、「高速を降りたセブンイレブンから、浦河方面に向かう道が通行できなくなっている」「東静内の国道が冠水していて、浦河から静内方面にも行けなくなっている」との書き込みが次々と更新された。サマーセールは3日目から取材に向かったが、日高自動車道は鵡川と日高富川間で土砂崩落のために通行止め。迂回路の道道も、大型車がすれ違えない程の道幅で、土砂崩れの跡が残り、道路の上を川のように水が流れているという悪路で、北海道市場まで辿り着くには、通常より2時間以上はかかったと筆者。その後、北海道に上陸した台風10号がもたらした大雨でも、十勝地方や上川地方に甚大な被害が出ている。貴重な人命が失われただけでなく、基幹産業である農業は浸水被害に見舞われた。あまりにも残酷過ぎる秋の長雨。誰もが笑顔になるような台風一過となる日は、いつやってくるのだろうかと筆者。

第94回は『還暦の帝王』 馬ミシュラン

小山内 完友/おさない ひろとも

“大井の帝王”こと的場文男騎手が60歳の誕生日を迎えた。的場騎手は1956年9月7日生まれ。1971年に下乗りとして大井の小暮嘉久厩舎に入門。中学卒業後地方競馬教養センターの第20期長期騎手候補生となる。20期の同期には、現役の森下博騎手、山崎尋美調教師、石川綱夫元調教師(故人)など。教養センターのかつての教官によると、この期はかなり仲が良かったそうだ。1973年11月6日、大井競馬第4競走のホシミヤマで初勝利を挙げる。2016年8月1日の大井競馬第2競走をダンディゴールドで勝ち、デビュー38,598戦目で地方競馬通算6,900勝を達成。その2日後の2016年8月3日、大井競馬のサンタアニタトロフィーをリアライズリンクスに騎乗し勝利。これが59歳10か月での勝利となり、自身の持つ国内最高齢重賞勝利騎手の記録を更新した。的場文男騎手にしか(おそらく)更新できそうもない記録がある。佐々木竹見騎手が持つ地方競馬通算7,151勝の更新である。「人生の宿題」と自らが語る東京ダービーは、35回騎乗し、なぜか2着9回。いつまでもお元気で、ケガなく少しでも長く騎手生活を続けて欲しいと願っていると筆者。

海外情報

2016 ヨーロッパ30ヵ国・地域計 総合サイアーズランキング(獲得賞金順)
2016 米3歳牝馬G1レース 勝馬一覧
チャーチルダウンズとJRAが日本版ケンタッキーダービーへの道を新設
北アメリカの16年生産頭数、前年とほぼ変わらない見込み

海外ステークスウイナーズ

ヨークインターナショナルS 5牡 Postponed が'15キングジョージから6連勝でG14勝目
ジャックルマロワ賞 前走サセックスS3着2人気3牡Ribchester が初G1制覇
ヨークシャーオークス Galileo×ヨハネスブルグのSeventh Heavenが愛オークスからG1連勝
トラヴァーズS 4月デビューArrogate Gレース初挑戦で37年ぶりコースレコードの圧勝
キングズビショップS 米芝牡馬チャンピオン2回Gio Ponti初産駒からG1馬誕生
パシフィッククラシック '14 米年度代表馬(2冠)California Chrome が'16 G12勝目

トピックス

2016年軽種馬後継者研修募集案内
2017年第39期生産育成技術者研修生募集案内
第8回地方競馬主催者軽種馬生産地現地検討会が行われる
JBBAからのお知らせ 実践研修プログラムのご案内
JRAからのお知らせ 強い馬づくりのための生産育成技術講座2016
第29回日本ウマ科学会学術集会のお知らせ
日本装削蹄協会 平成29年度装蹄師認定講習会受講生募集(二次募集)

海外流通促進

シンガポールで日本産馬のプロモーションを実施
海外競馬で活躍中の日本産馬(市場取引馬)

地方競馬ニュース

主なトピックス Aug ~ Sep
2016年8月・地方競馬場の売り上げ

生産関連ランキング

2016年9月各種ランキング
注目の2016年ファーストクロップサイアーズランキング掲載

軽種馬生産技術総合研修センター マンスリーレポート

  • マンスリーレポート81
    “アシと蹄を考える会”第11弾!パートⅡ
    ― 平成27年度第2回リム&フットケア・ワークショップ ―

From 競走馬のふるさと案内所・連絡センター

レポート(日高案内所・胆振連絡センター・十勝連絡センター・東北連絡センター・千葉連絡センター・南九州連絡センター)

The First Win JBBA 会員生産の初勝利馬一覧(2016.8.11 ~ 9.16)

表紙

第95回凱旋門賞(GI)優勝 Found(IRE)
Found(IRE) & マカヒキ
JBCポスター

JAIRSコーナー((公財)ジャパン・スタッドブック・インターナショナル) etc

刊行物注文へ

※ JBBA NEWSのほかに、全国馬名簿、軽種馬統計などの定期刊行物のご注文もできます。