一次診療

馬のかかりつけ医

馬産地における一次診療業務は、いわば“馬のかかりつけ医”としての役割を担う仕事であり、馬たちの健康を最前線で支える重要な職務として広く認識されています。

主な役割

  • 繁殖牝馬の発情管理や繁殖障害の治療、妊娠確認、分娩対応等の繁殖に関わる診療
  • 一般的な疾病・外傷の診断と治療(外傷、感染症、跛行、内科疾患、皮膚疾患など)
  • 応急処置(骨折や急性腹症等、緊急性の高い症例を二次診療施設へ搬送するまでの対応)
  • 日常的な健康管理と予防医療(ワクチン接種、寄生虫予防、血液検査など)

往診

牧場から依頼を受けた獣医師は、患畜のいる牧場へ直接出向いて診療を行います。馬をはじめとする大動物や多数飼育されている家畜は通院が難しいため、生産地では一次診療のほとんどがこうした往診によって対応されています。

生産牧場を巡る獣医師の往診車
育成牧場を巡る獣医師の往診車

就業時間

軽種馬生産地で一次診療を担う獣医師には、一般的な動物病院のような固定された診療時間割はほとんどありません。実際には、与えられた往診可能時間のなかで、広い生産地に点在する新規の診療依頼や継続診療を効率よく巡回しながら対応しています。

また、生産地の繁殖シーズンは出産が1月頃から始まり、種付けも2月から本格化します。分娩対応、繁殖検査、子馬の疾患などが集中するため、5月頃までは年間で最も忙しい時期となります。

こうした業務の実際を理解するには、インターンシップなどを通じて現場の診療を体験してみることが非常に有益です。特に繁殖シーズンの診療体制や業務量を知ることは、生産地での仕事を具体的にイメージするうえで大きな助けになるでしょう。

ある日のスケジュール

  1. 朝・午前

    繁殖シーズン中は、朝早くから牧場を回り、子宮や卵巣の超音波画像診断や触診、子宮洗浄など、交配に向けた検査および処置を行います。さらに、交配後や受胎後には、妊娠鑑定をはじめとする各種検査や処置を実施します。

    サラブレッドは1年1産であるため、限られた期間の中で交配の適期を正確に見極めることが重要です。こうした判断力と技術は、生産地獣医師の腕の見せどころの一つといえます。

  2. 日中

    日中は予約往診に加え、急患が発生した場合には速やかに対応します。診療内容は多岐にわたり、子馬から繁殖馬、種牡馬、現役競走馬まで、幅広いステージの馬を対象に、内科・外科・繁殖分野を中心としたさまざまな疾病や検査に携わることが、生産地獣医師の大きな特徴です。

  3. 夜間・休日

    夜間や休日は当番制で緊急往診に対応することが一般的です。馬は夜間に出産することが多く、異常分娩への対応も少なくありません。また、急な疾病や事故が必ずしも日中に起こるとは限らないため、24時間365日、いつでも対応できる体制づくりが求められます。